オートスケーリングとは
オートスケーリングとは、システムへのアクセスや処理の量を監視し、混雑してきたらサーバーの台数を自動で増やし、空いてきたら減らす仕組みのことです。
平易に言えば「客足に合わせて、自動でレジを開けたり閉めたりする店」です。昼のピークにはレジを増やし、閑散時間には減らして人件費を抑えます。システムでも同じように、必要なときだけ処理能力を増やすことで、混雑による遅延と、使っていない設備への支払いの両方を減らせます。
英語の Auto Scaling をそのままカタカナにした言葉で、クラウドが普及してから一般的になりました。物理的なサーバーを買う時代には、ピークに合わせて台数を用意するしかありませんでしたが、クラウドでは数分で台数を変えられるため、この考え方が実用になりました。
仕組み・ポイント
処理能力の増やし方には二種類あります。
| 種類 | 方法 | 特徴 |
|---|---|---|
| スケールアウト(水平) | サーバーの台数を増やす | 上限が高く、止めずに増減しやすい。オートスケーリングの主な対象 |
| スケールアップ(垂直) | 一台のサーバーの性能を上げる | アプリの改修が少なくて済むが、切り替え時に停止が伴うことがある |
オートスケーリングの設定は、主に次の要素で構成されます。
- 指標:何を見て判断するか(CPU使用率、リクエスト数、処理待ちの件数など)
- しきい値:どの値を超えたら増やし、どの値を下回ったら減らすか
- 最小台数・最大台数:どれだけ減っても残す台数と、増やしてよい上限
- 待ち時間:増減の直後に、次の判断までどれだけ待つか
- 予定による増減:毎朝9時に増やす、など時間帯が分かっている場合のあらかじめの調整
スケールアウトでは、増えたサーバーに通信を配るためにロードバランサーを組み合わせるのが一般的です。サーバーレスのサービスでは、こうした設定の多くをクラウド側が自動で行います。
実務での使い方・具体例
あるチケット販売サービスで、人気公演の発売開始時刻にアクセスが集中し、それ以外の時間は落ち着いている場面を考えます。
オートスケーリングを使った運用の例です。
- 通常時は最小限の台数で動かし、CPU使用率やリクエスト数で自動増減させる
- 発売開始時刻が決まっている公演は、その少し前に予定で台数を増やしておく(増える前に混雑が来るのを防ぐ)
- 最大台数を決め、想定外の急増で費用が膨らみすぎないようにする
- 増減が起きたら記録と通知を残し、後から設定が適切だったか振り返る
社内向けの業務システムでも使い道があります。たとえば月末の締め処理や、毎朝の始業直後に利用が集中し、夜間や休日はほとんど使われないシステムであれば、夜間は台数を最小にし、業務時間帯だけ増やす予定ベースの設定で、性能を落とさずに費用を抑えられます。外部公開のサービスほど急な波がない分、時間帯による予定の増減だけで十分な効果が出ることも少なくありません。
台数を増やしても速くならないケース
サーバーを増やしても、全員が一つのデータベースに書き込む構成では、データベースが詰まって改善しないことがあります。ボトルネックがどこにあるかを負荷テストで確かめ、データベースの読み取り専用の複製を使う、重い処理を順番待ちの仕組みに回す、といった対策と組み合わせて考えます。
また、オートスケーリングを使うには、アプリが「何台に増えても同じように動く」作りになっている必要があります。ログイン状態やアップロードファイルを各サーバーの中に持っている場合は、先に共通の保存先へ移す改修が必要です。
よくある誤解と注意点
- 増えるまでには時間がかかる:サーバーの起動には数分かかることがあり、瞬間的な急増には間に合わないことがあります。予定が分かる混雑は事前に増やしておきます。
- 最大台数を決めないと費用が膨らむ:攻撃的なアクセスや不具合による無限ループでも台数が増え、思わぬ請求につながることがあります。上限と費用の通知を設定します。
- 減らすときに処理中の作業が切れる:台数を減らす際、処理中のリクエストや作業が中断されないよう、終了時の振る舞いを設計します。
- 見る指標を誤る:CPU使用率だけを見ていると、処理待ちが積み上がっているのに台数が増えない、ということがあります。アプリの特性に合った指標を選びます。
- 設定は一度で決まらない:最初の設定は仮置きと考え、実際の増減の記録を見ながら調整します。
関連用語
- ロードバランサー:増えたサーバーへ通信を振り分ける仕組み
- サーバーレス:台数の増減をクラウドが自動で行う構成
- Kubernetes:コンテナ単位で自動増減を行える管理基盤
- 負荷テスト:どこまで耐えられるか、どこが詰まるかを事前に確かめる試験
- 実践記事:クラウド費用が想定より高いときの見直しポイントと削減手順
Otsumuに相談できること
アクセスの波が大きいサービスの構成見直しや、クラウド移行に合わせたオートスケーリングの設計をお手伝いしています。台数を増やせば解決するのか、データベースやアプリ側の改修が必要なのかの切り分けから行います。詳しくはクラウド移行をご覧ください。
30分の無料相談で、混雑が起きる場面や現在の構成を伺います。
執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.10.01