分類:企業事例 › メディア・広告・ゲーム
この事例の要点
- Bilibili Inc.は、ユーザーが投稿する動画(PUGV)を軸としたコミュニティを運営し、収益を付加価値サービス(VAS)、広告、モバイルゲーム、IP派生品等の4つに分けて開示しています(Form 20-F、2025年12月期)。
- 2025年の純収益は303億元(前期比13.1%増)で、粗利益率は前期の32.7%から36.6%に上がり、純利益は12億元となりました(Form 20-F、2025年12月期)。
- 同社は、広告とモバイルゲームを利益率の高い事業と位置づけ、成長が収益全体と利益率の改善を後押ししたと説明しています(Form 20-F、2025年12月期)。
どんな事業か
Bilibili Inc.は、ケイマン諸島で設立された持株会社で、主たる事務所は中国・上海にあります。ADSはナスダック・グローバル・セレクト・マーケットに上場しています。アニメ・コミック・ゲーム(ACG)の文化から広がったコミュニティで、2025年の平均日次アクティブユーザーは1億1,200万人、月間アクティブユーザーは3億6,800万人(いずれも前年比8%増)、1日あたりの平均利用時間は108分(前年は102分)と記載されています(Form 20-F、2025年12月期)。
同社は、ユーザーの関心と行動の理解を土台に、ユーザーの求める内容やサービスに合わせて収益化する「ユーザー中心の収益化」を掲げています。利用体験を損なわずに収益化の道を整えることが方針とされ、動画の視聴を入り口に、会員、ライブ、広告、ゲームへと広げています(Form 20-F、2025年12月期)。
収益の仕組み
同社の収益は、次の4本で構成されます(Form 20-F、2025年12月期)。
- VAS:プレミアム会員(月・四半期・年の定額)、ライブ配信の仮想アイテム販売、音声ドラマやコミックのほか、定額で投稿者の限定動画が見られる仕組みなどを含みます。
- 広告:成果連動型、ブランド型、投稿者が制作に関わる「ネイティブ広告」の3形式です。同社は、AIを広告の制作や配信に取り入れていると述べています。
- モバイルゲーム:他社開発のゲームの独占配信や共同運営が中心で、同社が配信、サーバー運営、販促、顧客対応を担います。
- IP派生品等:関連グッズなどの収益です。
収益の一部は、ライブ配信の配信者や事務所、ゲーム開発者、コンテンツ制作者に分け合われます。コミュニティの担い手が収益を得られる構造が、投稿や配信を続ける動機になっています(Form 20-F、2025年12月期)。
数字で確かめる
- 2025年の純収益303億元の内訳は、VASが119億元(前期比8.4%増)、広告が101億元(22.8%増)、モバイルゲームが64億元(14.0%増)、IP派生品等が20億元(3.3%減)です(Form 20-F、2025年12月期)。会員中心のVASが収益の約4割(119億元÷303億元)を占めるなか、広告の伸びが収益全体を押し上げたことが読み取れます。
- 2025年12月31日時点のプレミアム会員は2,530万人(前年比12%増)で、そのうち約8割が年額または自動更新の会員です(Form 20-F、2025年12月期)。継続的に払う会員が多く、収益の土台になっていることが読み取れます。
- 四半期の平均月間課金ユーザーは、2025年第4四半期に3,570万人(2024年第4四半期は2,950万人)でした(Form 20-F、2025年12月期)。課金する層が1年で広がったことが読み取れます。
- 収益分配コストは2025年に121億元(前期比11.9%増)で、収益303億元に対して約40%にあたります(収益から算出)。コミュニティの担い手と配信チャネルへの分配が、費用の大きな部分を占めることが読み取れます。
- トップ10の投稿者・配信者が総収益に占める割合は、2023〜2025年の各年で1%未満と記載されています(Form 20-F、2025年12月期)。特定の人気者に依存しない収益構造であることが読み取れます。
Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか
ここからはOtsumuの考察です。この事例は、無料で使えるコミュニティを入り口にして、その中に複数の課金の出口を設ける設計だと読めます。動画を見る人が増えれば広告の面が増え、熱量の高い人は会員やライブ、ゲームにお金を使う。同じユーザーに対して、関心の深さに応じた出口が段階的に用意されていると考えられます。
もう一つのポイントは、収益の一部を分け合う仕組みです。投稿者や配信者が収益を得られるため、コンテンツが増え、コミュニティの価値が上がります。その分、収益分配コストが重くなるため、利益率は分配と収益化の効率のバランスで決まります。粗利益率が上がった背景には、利益率の高い広告とゲームの成長があると同社が説明していることから、事業の組み合わせの比率が利益に効いていると読めます。
留意点は、コミュニティの雰囲気を損なうと入り口自体が弱くなることです。同社が「利用体験を損なわない収益化」を繰り返し述べているのは、その裏返しと考えられます。
自社事業に持ち帰る問い
- 自社の顧客や利用者が集まる「場」はどこにあり、その中に課金の出口を何本つくれるでしょうか。
- 関心の浅い人と深い人で、払ってもらう形(広告・会費・個別購入)をどう分けられるでしょうか。
- 場を支える人(投稿者・協力者)に、収益のどれだけを分け合うと、場の価値が続くでしょうか。
小さく試すなら
- 自社の顧客や見込み客が集まる場(メール、会員ページ、イベントなど)を一つ選び、参加者を「たまに見る人」「よく使う人」「熱心な人」に分けて人数を数えます。
- 各層の数名に、どんな情報や特典なら対価を払ってもよいかを聞き、「広告に近い形」「会費」「単発購入」のどれが合うかを記録します。
- 最も反応のあった層に向けて、小さな有料の提供(限定の情報、先行案内、回数券など)を一つだけ用意し、告知します。
- 2〜4週間で申込数と、有料提供に対する無料層の反応(離脱や不満の有無)の両方を確かめ、場の雰囲気を損なわない範囲で続けるかを決めます。
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資料の位置づけ
企業・サービス:Bilibili Inc. / Bilibili。参照資料:Form 20-F(2025年12月期)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。
参考資料と編集について
上記の公開資料(目論見書・年次報告書・企業の公式発表など)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。
執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.10.25