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Blender Foundation「Development Fund」に学ぶ個人と企業の寄付で開発を支える事業設計

無料の3DソフトBlenderを、企業の継続支援と個人の寄付で開発するBlender Foundation。年次報告書2025の収入内訳から、寄付の層ごとの役割と、個人寄付を増やす工夫を確かめます。

分類:企業事例 › ソフトウェア・SaaS

この事例の要点

  • Blender Foundationは、無料・オープンソースの3DソフトBlenderを支える公益団体で、同団体は主な収入モデルを寄付(Development Fund)としています(Blender Foundation Annual Report 2025)。
  • 2025年の収入5,713,078ユーロのうち、Development Fundの企業・個人の会員、単発の寄付、その他の大口寄付を合わせた寄付系の収入が約8割を占めます(同、Income表から計算)。
  • 2025年は、企業と個人の寄付がほぼ半々になるよう、単発の寄付を募る施策を強め、キャンペーンの成果は前年の約2倍と報告されています(同)。

どんな事業か

Blenderは、モデリング、アニメーション、レンダリングなどに使える3Dクリエイション用ソフトウェアで、GNU General Public Licenseのもとで公開されています。Blender Foundationは、blender.orgの運営と、Blenderの開発・維持を担う公益団体で、拠点はアムステルダムのBlender HQです。作業の実務は、Blender Institute(財団の実働会社)とBlender Studio(アーティストを雇い、オープンな作品とその制作知識を公開する会社)が担います(Blender Foundation Annual Report 2025)。

2025年末に創設者のTon Roosendaal氏がStudioとInstituteを財団へ譲渡し、法人の構造が変わりました。それに伴い、2025年から3つの組織の数字を連結して示しています(同)。同団体は2020年以降、活動と財務の報告を毎年公開し、透明性を高める方針を示しています(blender.org「Foundation」ページ)。

収益の仕組み

Blenderそのものは無料でダウンロードできます。収入は、使う人や使う企業の自発的な支援を、いくつかの層に分けて受け取る形になっています。

  • 入り口:無料で使えるため、2025年のダウンロードは2,000万回と報告されています。使い始めた人が支援の対象になります。
  • 企業の継続支援:Development Fundの法人会員(Patron、Corporate)。会員企業の一部は、資金だけでなく開発者を割り当てる形でも開発に関わっています(AMD、Intel、Nvidia、Qualcommなどが報告書に記載されています)。
  • 個人の継続・単発支援:Development Fundの個人会員と、単発の寄付(Generic Small / One Time Donations)。2025年は単発の寄付の選択肢を用意しました。
  • 周辺の収入:Blender Studioの購読、Blender Conference(BCON)、ストアなどが、寄付とは別の流れとして示されています。
お金を払う人・対価法人会員(Patron、Corporate)個人会員と単発の寄付者Studio購読・BCON・ストア無料のオープンソース3DソフトBlender
図1 Blender Foundationの収益の流れ(Blender Foundation Annual Report 2025にもとづく整理)。

数字で確かめる

  • 2025年の総収入は5,713,078ユーロ(2024年は4,253,003ユーロ)です(Blender Foundation Annual Report 2025)。寄付を軸にした収入が1年で大きく伸びたことが読み取れます。
  • 収入の内訳は、Dev. Fund Patronが1,355,515ユーロ(24%)、Corporateが449,469ユーロ(8%)、Individualsが928,192ユーロ(16%)、単発などの小口寄付が1,441,001ユーロ(25%)、その他の大口寄付とSuperHiveが389,199ユーロ(7%)でした(同)。寄付系の合計は4,563,376ユーロで、総収入の約8割にあたり、層を分けて集めていることが読み取れます。
  • 単発などの小口寄付は2024年の618,785ユーロから2025年は1,441,001ユーロへ増え、報告書も単発の寄付が2024年の約2倍になったと記しています(同)。個人が参加しやすい入口を足したことが成果につながったことが読み取れます。
  • 寄付以外では、Blender Studioが741,666ユーロ(13%)、BCON Amsterdamが300,482ユーロ(5%)でした(同)。寄付と並行して、事業性のある収入も持っていることが読み取れます。
  • 支出側では、開発者の給与(スタッフ)が1,445,808ユーロ(25%)、決済手数料(Transaction fees)が222,081ユーロ(4%)、翌年への積み立て(Reservation)が164,167ユーロ(3%)でした(同)。寄付を集める過程の費用と、不測の事態への備えが計上されていることが読み取れます。

Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか

ここからはOtsumuの考察です。この事業は「寄付・パトロン(支援型)」の型で、支援する人を層に分けている点が特徴と読めます。企業は継続的な会員(Patronなど)として大口で関わり、個人は小さな金額から、継続でも単発でも参加できます。報告書は、企業の寄付と個人の寄付が近い比率で釣り合っている状態を健全なものとして述べ、企業の会員が増えるなかで個人や小規模事業者の寄付を増やす方法を探るとしています。個人の寄付は、コミュニティのプロジェクトとしての独立性を保つうえで重要だとも書かれており、特定の支援者に偏らない設計を意識していると考えられます。

数字からは、単発の寄付を用意したことが効いたと読めます。月額の会員になるほどではないが、役に立った分だけ払いたいという人にも、窓口が開かれたと考えられます。報告書は、多くの利用者は資金面の支援が難しい立場にあるとして、キャンペーンは支援できる人に向けたものだと説明しています。

一方で、収入が増えるほど、決済手数料や管理の費用も増える点には留意が必要です。報告書でも、開発者の給与が支出に占める割合は下がり、組織の運営費が増えたと説明されています。寄付が増えることと、使い道を説明し続けることは、セットで考える必要があると読めます。

自社事業に持ち帰る問い

  • 自社の製品やサービスを無料で使っている人のうち、お礼として支援したい人には、どんな入口があるでしょうか。
  • 企業の支援者と個人の支援者で、期待する見返りや関わり方はどう違うでしょうか。
  • 収入が一部の大口に偏らないために、小さな金額の窓口をどこへ置けるでしょうか。

小さく試すなら

  1. 無料で提供している自社の成果物(ツール、記事、テンプレートなど)を挙げ、利用者の数と、お礼を言われた回数を集計します。
  2. 利用者の数人に、「いくらなら、どんな形で支援したいか」を聞き、継続と単発のどちらを望むかを記録します。
  3. 単発の支援を受け付けるページを1枚つくり、使い道を一文で明記して、既存の利用者にだけ案内します。
  4. 2〜4週間のうちに、支援の件数、金額、決済にかかった費用を集計します。件数が少なければ、使い道の見せ方を見直します。

関連するビジネスモデル

資料の位置づけ

企業・サービス:Blender Foundation / Blender Development Fund。参照資料:Blender Foundation Annual Report 2025(2026年9月版)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。

参考資料と編集について

上記の公開資料(目論見書・年次報告書・企業の公式発表など)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。

執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.10.25

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