分類:企業事例 › 銀行・決済・フィンテック
この事例の要点
- dLocal Ltd は、新興国の消費者が使う現地の決済手段を、世界の大手加盟店が「一つのAPI、一つのプラットフォーム、一つの契約」で使えるようにする決済会社です(2025年通期 決算発表 6-K)。
- 2025年通期の決済取扱高(TPV)は408億1,600万米ドルで、前期の255億7,500万米ドルから60%増えました。収益は10億9,360万米ドル(前期比47%増)です(2025年通期 決算発表 6-K)。
- 収益の伸びより取扱高の伸びが大きく、取扱高に対する粗利の比率は下がっています。規模の拡大と単価のバランスが、この事業設計を読む要点です(決算発表の数値から計算)。
どんな事業か
dLocal Ltd はケイマン諸島に主たる事務所を置き、連絡窓口はウルグアイのモンテビデオにあります。会計基準はIFRSで、事業セグメントは決済処理の一つだけです(Form 20-F、2025年12月期)。エンドユーザーは主にラテンアメリカに集中し、アフリカやアジアでも事業を行っています(Form 20-F)。
同社は2016年に事業を始め、国内の現地決済(ローカル決済)と国境をまたぐ決済の両方で、入金(pay-in)と出金(pay-out)のネットワークを運営しています。現在は40の国・地域で決済を処理し、100社を超える第三者の決済処理会社・アクワイアラ・収納機関と取り決めを結んでいます(Form 20-F、2025年12月期)。
収益の仕組み
加盟店は世界の大手企業が中心で、新興国ごとに現地法人や決済手段の接続を用意せずに、dLocalのAPIだけで現地の消費者から代金を受け取ったり、現地の相手へ支払ったりできます。同社は入出金の取引ごとに適用する為替レートも設定します(Form 20-F)。収益構造は、次の三段で整理できます。
- 入り口:大手加盟店が一つの契約とAPIで導入する。国ごとの現地法人や接続は同社が肩代わりする。
- 課金:決済の取扱高に連動して収益が生まれる。入出金の取引に適用する為替レートも同社が設定する。
- 継続:加盟店の販売が増えるほど取扱高が増える。同社は「アセットライトで現金化率の高い財務モデル」と説明している(決算発表 6-K)。
数字で確かめる
- 2025年通期のTPVは408億1,600万米ドル(前期255億7,500万米ドル、60%増)で、取扱高が短期間に大きく伸びていることが読み取れます(2025年通期 決算発表 6-K)。
- 収益は10億9,360万米ドル(前期7億4,600万米ドル、47%増)、粗利は4億280万米ドル(前期2億9,470万米ドル、37%増)で、取扱高や収益より粗利の伸びが小さいことが読み取れます(同上)。
- 収益を取扱高で割ると2025年は約2.7%、前期は約2.9%で、取扱高あたりの収益が下がっていることが読み取れます(決算発表の数値から計算)。
- 当期利益は1億9,690万米ドル(前期1億2,050万米ドル、63%増)、調整後EBITDAは2億7,810万米ドルで、規模の拡大が利益に結びついていることが読み取れます(同上)。
- 上位10顧客が2025年の収益の61%を占め、2社がそれぞれ収益の10%超を占めるため、大口顧客への依存度が高いことが読み取れます(Form 20-F、2025年12月期)。
Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか
ここからはOtsumuの考察です。新興国向けの決済は、国ごとに決済手段、規制、為替、銀行網が異なり、世界の加盟店が一社ずつ接続すると手間が膨らみます。dLocalはその「国ごとの違い」を引き受け、加盟店には単純な窓口だけを見せています。顧客が面倒だと感じる部分を肩代わりし、その対価を取扱高に連動して受け取る設計だと読めます。
一方で、取扱高の伸びが収益の伸びを上回り、単価が下がっている点は、大口顧客との交渉力と規模のバランスを示唆します。顧客が少数の大手に集中していれば、条件の見直しが収益に与える影響も大きくなります。規模を取りに行く局面と、単価を守る局面を、どう切り替えるかが問われる事業だと考えられます。
自社事業に持ち帰る問い
- 自社の顧客が、面倒でも自前で対応している「地域や制度ごとの違い」はないか。それを肩代わりして価値にできないか。
- 売上が取引量に連動する設計では、量の伸びと単価の下落を、どの指標で並べて見ているか。
- 上位の顧客に収益が集中している場合、集中度を下げる手立てと、集中を前提にした条件設計をどう両立させるか。
小さく試すなら
- 顧客が自社サービスの利用前後に手作業で行っている「地域・制度ごとの手続き」を、1週間で洗い出す。
- 洗い出した中から1つを選び、自社が代行する簡易版(手順書とテンプレート)を作る。
- 2〜3社の既存顧客に試してもらい、削減できた手間と、対価を払ってよいかを聞く。
- 4週間目に、取引量・単価・顧客別の比率を一覧にし、拡大してよいかを判断する。
関連するビジネスモデル
資料の位置づけ
企業・サービス:dLocal Ltd「新興国向け決済プラットフォーム」。参照資料:2025年通期 決算発表(Form 6-K 添付のプレスリリース)、Form 20-F(2025年12月期)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。
参考資料と編集について
上記の公開資料(目論見書・年次報告書・企業の公式発表など)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。
執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.10.25