分類:企業事例 › ITサービス・BPO
この事例の要点
- Endava plcは、決済(Payments)、銀行・資本市場(BCM)、テクノロジー・メディア・通信(TMT)などの業界に専門性を絞り、ソフトウェアの設計・開発・運用を受託しています(Form 20-F、2025年6月期)。
- 過去5年の平均で、年間売上の90.7%は前年度にも取引があった顧客から生まれています。収益の土台は既存顧客の継続的な発注です(Form 20-F、2025年6月期)。
- 2025年6月期は決済の売上が前期比19.0%減った一方、買収の寄与を含むヘルスケアが103.8%増となり、業界構成が入れ替わっています(Form 20-F、2025年6月期)。
どんな事業か
Endava plcはイングランド・ウェールズ法にもとづく会社で、本社所在地はロンドンです。ニューヨーク証券取引所にDAVAの銘柄でADSを上場しています。2000年創業で、当初はロンドンの1拠点から英国の顧客にサービスを提供し、現在は欧州、中東、北米、アジア太平洋の顧客に展開しています(Form 20-F、2025年6月期)。
サービスの提供拠点は、ルーマニア、ブルガリア、ポーランドなどのEU諸国に加え、非EU諸国、アルゼンチンやコロンビアなどの中南米にあります。同社は従業員を「Endavans」と呼び、2025年6月末の取引顧客(過去12か月に支払いのあった顧客)は619社でした。新しい技術の探索を専門に担う「Dava.X」という部門も置いています(Form 20-F、2025年6月期)。
収益の仕組み
同社は主に時間・工数課金(time-and-materials)の契約でサービスを提供し、一部で固定価格の契約も扱います。従業員の稼働を日額や時間額で請求する構造です(Form 20-F、2025年6月期)。
- 入り口:業界ごとの専門チーム。決済、銀行・資本市場、保険、TMT、モビリティ、ヘルスケアなどの業界で、各業界に固有の課題(加盟店の決済基盤、取引・決済システム、請求や引受の自動化など)に対応します。
- 課金:工数に応じた請求。稼働率と、拠点ごとの人員配置が利益を左右します。
- 継続:長期の取引先による追加の発注。ただし同社は、顧客との長期の取引約束が一般にないと述べています。
- 拡張:買収による新分野への進出。2025年には米国のヘルスケア分野でGalaxEを加えました。
数字で確かめる
- 2025年6月期の売上高は772,255千英ポンドで、前期の740,756千英ポンドから4.3%増えました(為替の影響を除くと6.3%増)。2024年6月期は6.8%減だったため、前期の落ち込みから戻していることが読み取れます(Form 20-F、2025年6月期)。
- 当期利益は21,212千英ポンドで、売上高に対し2.7%です。2023年6月期は94,163千英ポンド(11.8%)でした。売上が大きく変わらないなかで、利益率が低い水準にあることが読み取れます(Form 20-F、2025年6月期)。
- 決済の売上比率は2023年6月期の29.2%から2024年6月期に24.1%、2025年6月期に18.7%へ下がりました。特定の業界の需要が弱まったとき、売上全体が影響を受けやすいことが読み取れます。同社は決済の顧客がマクロ環境に慎重だったことを理由に挙げています(Form 20-F、2025年6月期)。
- ヘルスケアの売上は91,481千英ポンドで、前期の44,893千英ポンドから103.8%増えました。同社は主にGalaxE買収で得た顧客の寄与と説明しており、新しい業界を買収で一気に加える方法が使われたことが読み取れます(Form 20-F、2025年6月期)。
- 上位10社の売上は279.4百万英ポンドで、売上高の36.2%です(前期は32.5%)。一方、単独で売上の10%を超える顧客はありません。大口に偏りつつも、1社に依存はしていないことが読み取れます(Form 20-F、2025年6月期)。
Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか
ここからはOtsumuの考察です。業界を絞る設計は、顧客の業務や規制の知識を蓄積し、その知識が次の案件の提案力や立ち上がりの速さにつながる点で有利に働くと読めます。90.7%という既存顧客依存の高さは、この専門性が信頼を生み、追加の発注につながっていることの表れとも読めます。
一方で、業界を絞ることは、その業界の景気に収益が左右される裏返しでもあります。決済の比率が下がった一方で、同社が銀行・資本市場やヘルスケアを伸ばしているのは、偏りを補う動きと読めます。ただし同社は、新しい業界は経験が浅く、成功の保証はないとリスク要因に書いています。
工数課金の弱点は、利益が稼働率と人員の最適化に依存することです。2025年6月期は従業員数の調整を行ったと説明されており、需要が揺らぐ局面では、人員の配置が利益率に直結するといえます。
自社事業に持ち帰る問い
- 自社が最も深く理解している業界や業務はどこで、その知識は次の案件の提案や立ち上げにどう生かされているでしょうか。
- 売上が特定の業界や顧客に偏っているとき、需要が落ちた場合に備えて、どの隣接分野に広げられるでしょうか。
- 新しい分野へ広げるとき、自社で育てるのと、既存の事業を持つ会社と組む(買収を含む)のでは、何が変わるでしょうか。
小さく試すなら
- 直近1〜2年の売上を、業界別と顧客別に集計し、上位の業界と顧客の比率を確認します。
- 上位の業界のなかで、再依頼や追加の発注につながった案件を3〜5件挙げ、共通する要因(担当者の知識、提供物の型など)を書き出します。
- その要因を一枚の資料(提案の型)にまとめ、隣接する業界の見込み顧客2〜3社に、同じ型で提案できるか試します。
- 2〜4週間で、反応と必要な追加の知識を整理し、新しい業界を本格的に狙うか、既存業界の深耕を続けるかを決めます。
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資料の位置づけ
企業・サービス:Endava plc/業界特化のソフトウェア開発受託。参照資料:Form 20-F(2025年6月期)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。
参考資料と編集について
上記の公開資料(目論見書・年次報告書・企業の公式発表など)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。
執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.10.25