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Faraday Future「FX Super One」に学ぶ予約の数え方と預り金の事業設計

B2B向けの返金不可の予約金と、一般向けの返金可能な予約を分けて数える構造を学びます。予約件数と納車・売上の差、予約を数えるときの注意点を、米国SEC提出のForm 10-K(2025年12月期)から確かめます。

分類:企業事例 › 自動車・EV

この事例の要点

  • Faraday Future Intelligent Electric Inc.は、2025年12月31日時点で、約13,600件の拘束力のない返金不可のB2B予約金と、536件の拘束力のない返金可能なB2C予約を受けており、合計14,136台の予約があると記載しています(Form 10-K、2025年12月期)。
  • B2Cの予約は返金可能な預り金として負債に計上され、2025年12月31日時点で440万ドル(前年は300万ドル)です。B2Bの予約金は返金不可で、購入台数に充当できる設計です(Form 10-K、2025年12月期)。
  • 2025年12月期の売上高は536千ドル、純損失は397,082千ドルで、予約の件数に比べ、売上は小さい段階です(Form 10-K、2025年12月期)。

どんな事業か

Faraday Future Intelligent Electric Inc.は、米国カリフォルニア州ガーデナに本社を置く電気自動車の会社で、ナスダックに上場しています。高級電気自動車「FF 91」に加え、2025年に発表した「FX Super One」などの「FX」ブランドの車種を手がけています(Form 10-K、2025年12月期)。

FX Super Oneは、高級MPVの区分に位置づけられる車両で、バッテリー式電気自動車と、AIハイブリッドの航続距離延長型の2つの動力構成が計画されています。同社は、FF 91とFXの車種で米国での先行予約(プレオーダー)を受け付けています。FF 91については、2025年12月31日までに販売またはリースした台数は16台にとどまるとしています(Form 10-K、2025年12月期)。

収益の仕組み

この事例の中心は、予約を性格の異なる2種類に分けて扱っている点です。

  • B2B予約:事業者向けの、拘束力のない先行予約契約で、返金不可の定額の預り金を伴います。この預り金は、将来の購入契約のもとで、限られた台数の購入に充当できます。2025年4月には、ニューヨークの販売店との間で最大1,000台分の予約契約を結び、10万ドルの返金不可の預り金と、最大300台分の優先納車が含まれたと記載されています。
  • B2C予約:個人向けの予約で、1台ごとに結びつき、返金可能または販促用の預り金を伴います。返金可能な預り金は負債(未払費用その他の流動負債)に計上されます。
  • 収益への転換:預り金は、車両の引渡し、または予約が解消した時点で、契約条件に従って収益に認識されます。車両購入契約が結ばれた後は、代金は引渡し前に支払われ、返金不可の前受けとして、未提供分の収益は繰り延べられます。

あわせて、初期の支持者や販売チャネルのパートナー、インフルエンサーを活用する「共創(コ・クリエーション)」のプログラムを設け、B2Cの予約を増やす取り組みを進めていると説明しています(Form 10-K、2025年12月期)。

お金を払う人・対価事業者の返金不可のB2B予約金個人の返金可能なB2C予約金電気自動車の予約受付
図1 Faraday Futureの収益の流れ(Form 10-K(2025年12月期)にもとづく整理)。

数字で確かめる

  • 予約は合計14,136台(約13,600件のB2B、536件のB2C)で、2024年末はB2Cの299件でした(Form 10-K、2025年12月期)。FX Super Oneの発表とともに、予約の数え方と件数が大きく変わったことが読み取れます。
  • B2Cの預り金は440万ドル(2025年12月31日)で、2024年12月31日の300万ドルから増えています(Form 10-K)。返金可能な預り金の残高は、事業を支える資金としては小さい規模であることが読み取れます。
  • 2025年12月期の売上高は536千ドル、売上原価は98,302千ドルで、売上総利益は97,766千ドルのマイナスでした(Form 10-K、2025年12月期)。予約の件数と、販売による収益のあいだには、大きな差があることが読み取れます。
  • 純損失は397.1百万ドル、営業活動に使った現金は107.6百万ドルです(Form 10-K、2025年12月期)。事業の資金は、予約金ではなく外部からの調達に支えられていることが読み取れます。
  • 同社は、拘束力のない予約や関心表明が、拘束力のある注文・販売に転換しない可能性を、リスクとして記載しています(Form 10-K)。予約の件数が、そのまま売上の見込みを意味しないことが読み取れます。

Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか

ここからはOtsumuの考察です。この事例から学べるのは、予約を「数え方」と「お金の扱い」で分けて設計する点だと読めます。返金不可の預り金を求めるB2Bは、顧客の側に負担がある分、需要のシグナルとしても資金としても強いと考えられます。一方、返金可能なB2Cは、負担が軽いため集まりやすい反面、実際の購入への転換率が読みにくい。同じ「予約」でも、性格が違うものを一つの数字にまとめないことが、まず大切だと考えられます。

同社の開示には、過去の特別委員会の調査で、FF 91の「14,000件超の予約」という説明が、「実際に支払いのあった予約は数百件で、残りは支払いのない関心表明だった」ため誤解を招く可能性があったと指摘された、との記載もあります(Form 10-K、2025年12月期)。予約件数を外に示すときは、支払いの有無や返金の可否、拘束力の有無を併記することが、信頼を守る前提になることを示す例だと読めます。

もう一つの論点は、予約と、売上や利益は別だという点です。売上が小さく損失が大きい段階では、予約は将来の販売の可能性を示すにとどまり、事業を継続する資金は別に必要になります。予約を増やす施策と、生産・納車の実行力を、分けて評価することが重要だと考えられます。

自社事業に持ち帰る問い

  • 自社が「予約」「問い合わせ」「見込み」と呼んでいるものは、支払いの有無や返金の可否で分けると、それぞれ何件あるでしょうか。
  • 法人向けには返金不可の預り金を、個人向けには返金可能な予約を、というように顧客の種類で条件を変える余地はあるでしょうか。
  • 予約件数を社内外に示すとき、拘束力や支払いの有無をどう併記すれば、誤解なく伝わるでしょうか。

小さく試すなら

  1. 直近の見込み顧客・予約・問い合わせを一覧にし、「支払い済み」「支払いなし・拘束なし」「契約済み」の3区分に分けて数えます。
  2. 区分ごとに、最終的に購入・契約に進んだ割合を、過去の実績から求めます。実績が少ない場合は、その旨を併記します。
  3. 法人の顧客数社と個人の顧客数名に、預り金の有無と返金条件を変えた2通りの案内文を見せ、どちらが申し込みやすいかを聞きます。預り金の扱いは、決済事業者や専門家にも確認します。
  4. 2〜4週間で、申し込みの数と断られた理由を整理します。預り金ありでも申し込みが得られれば、小規模に運用を始め、得られなければ価値の伝え方や条件を見直します。

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資料の位置づけ

企業・サービス:Faraday Future Intelligent Electric Inc.(米国、ナスダックに上場)/FX Super Oneほかの予約。参照資料の対象:2025年12月期 Form 10-K。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。

参考資料と編集について

上記の公開資料(目論見書・年次報告書・企業の公式発表など)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。

執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.10.25

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