分類:企業事例 › 銀行・決済・フィンテック
この事例の要点
- Figure Technology Solutionsは、自社ブランドの融資に加え、他の金融機関が自社名で住宅担保融資(HELOC)を出せるよう融資審査・実行の基盤を提供しています。2025年は約83億ドルの住宅担保融資を支援し、前期比62%増でした(Form 10-K、2025年12月期)。
- 収益は、提携先などが基盤を使う際の手数料に加え、融資の組成・売却益・回収サービスから生まれます。HELOCは組成額の98%超を占めます(Form 10-K)。
- 2025年12月期の純収益は5億686万ドル、純利益は1億3,428万ドルで、前期の1,992万ドルから増えました。一方、収益の大半が一つの商品に依存する点が主要リスクとして示されています(Form 10-K)。
どんな事業か
Figure Technology Solutions, Inc.は米国の企業で、Nasdaq Global Select Marketに上場しています。同社は、消費者向け融資と暗号資産の分野で、ブロックチェーンの台帳を使った貸出・取引・投資の仕組みを提供すると説明しています。2018年に自社ブランドの住宅担保融資から消費者信用に参入し、その後、提携先が自社ブランドで融資を行うパートナーブランド型へ広げました。2025年12月31日時点のアクティブなパートナーは307社でした(Form 10-K、2025年12月期)。
同社は、融資の所有権や回収権を記録する登録簿DARTをProvenance Blockchain上で運営し、2025年に同社の融資基盤で組成された融資の87%がDARTを使ったと説明しています。2024年6月に開始した市場Figure Connectでは、提携先が組成した融資を買い手・投資家へつなぎ、2025年末時点で約39億ドルの住宅担保融資が第三者により取引され、参加者は48社でした(Form 10-K)。
収益の仕組み
同社は収益を、基盤の利用に応じた手数料と、自らが関与する融資から得る収益の2系統で説明しています(Form 10-K)。
- 入り口:提携先は同社の融資基盤の利用権を得て、自社名で融資を提供します。同社は自社ブランドの融資も直接提供しています。
- 課金:提携先や利用者の取引量に応じた手数料(エコシステム・技術手数料)を得ます。そのほか、組成手数料、売却益、回収サービス収益があります。
- 継続:組成した融資は倉庫型融資枠でいったん資金調達し、多くを売却・証券化します。同社は2025年末までにHELOCの証券化を23回、累計発行額70億ドルで支援しました。
数字で確かめる
- 2025年のエコシステム取引量は90.9億ドルで、前期の58.8億ドルから増えました。うち消費者ローンのマーケットプレイス取引量は83.8億ドルで、パートナーブランド型が64.0億ドル、Figureブランドが19.8億ドルでした。提携先経由の比重が高いことが読み取れます(Form 10-K)。
- Figure Connect経由の取引量は2025年に38.4億ドルで、前期の約8百万ドルから大きく増えました。市場が立ち上がったことが読み取れます(Form 10-K)。
- 純収益は5億686万ドル(前期3億4,089万ドル)、調整後EBITDAは2億5,116万ドルで、調整後EBITDAマージンは48.8%でした。計算式は同社の開示表に沿っており、収益が増えると利益率も上がったことが読み取れます(Form 10-K)。
- 上位10社の提携先が組成額に占める割合は2025年に56%(前期52%)で、少数の提携先への集中があることが読み取れます(Form 10-K)。
- 貸借対照表上の融資404百万ドルのうち、倉庫型融資枠で調達しているのは210百万ドル(52%)で、前期の77%から低下しました。手元の資金調達構造が変わっていることが読み取れます(Form 10-K)。
Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか
ここからはOtsumuの考察です。この事例は、自社の事業そのもの(融資)を、他社が使える「道具」として切り出して外販した設計だと読めます。提携先が増えるほど融資の組成量と売却先の需要が増え、市場の流動性と同社の手数料が同時に高まる、という好循環を狙っていると考えられます。
一方で、収益の大半が単一の商品と少数の提携先に集中している点は、同社自身がリスクとして挙げています。基盤の外販は、利用者が増えるほど強みになりますが、商品の幅が狭いと提携先が他社へ移る余地も残ります。また、自社でも融資を抱える以上、資金調達と市況の影響を受ける構造です。
自社事業への示唆としては、社内で磨いた業務プロセスを「他社が使える形」にする際、道具としての収益(手数料)と、自ら関与する収益(売却益など)を分けて把握しておく点にあります。
自社事業に持ち帰る問い
- 自社が日常的に行っている業務のうち、他社にも使ってもらえる形に切り出せるものはどれか。
- 提携先が増えたとき、自社のコストと収益はどちらが先に増えるか。特定の提携先への集中は何割までなら許容できるか。
- 手数料型の収益と、自ら在庫・資金を抱える収益を、会計上どこまで分けて見られているか。
小さく試すなら
- 1週目:自社の主要業務を5つ挙げ、他社に提供できそうなものに印を付ける。
- 2週目:印を付けた業務について、提供に必要な手順・ツール・責任範囲を一枚にまとめる。
- 3週目:既存の取引先1〜2社に、試験提供の可否を聞く(金額や条件はまだ決めない)。
- 4週目:提供した場合の手数料と、自社で行う場合の収益を、架空の数値で並べて比べる。
関連するビジネスモデル
資料の位置づけ
企業・サービス:Figure Technology Solutions, Inc.(HELOC融資基盤、Figure Connect)。参照資料:Form 10-K(2025年12月期)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。
参考資料と編集について
上記の公開資料(目論見書・年次報告書・企業の公式発表など)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。
執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.10.25