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この事例の要点
- Forrester Researchは、調査の購読(研究サービス)を、契約価値(CV)という指標で管理しています。2025年の売上高397百万ドルのうち、調査の購読が約75%を占めました(Form 10-K、2025年度)。
- 2025年12月末の契約価値は292.4百万ドルで、前年末から6%減りました。顧客数も減少しており、継続契約型の事業でも縮小する局面があることが読み取れます(Form 10-K、2025年度)。
- 同社は、顧客維持率の上昇を、維持率向上の取り組みとAI関連製品の投入に結びつけて説明しています。AIで情報が手に入りやすくなる時代に、購読の価値をどう再定義するかを考える材料になります。
どんな事業か
Forrester Research, Inc.は、米国マサチューセッツ州ケンブリッジに本社を置き、ナスダック(FORR)に上場している企業です。事業と技術の意思決定者に向けて、調査、コンサルティング、イベントを提供しています(Form 10-K、2025年度)。
同社は、2025年12月末時点で、1,700社を超える顧客企業に製品・サービスを提供し、単独で売上の3%を超える顧客はなかったと記載しています。調査の内容は、同社独自の生成AIツール「Forrester AI」からも利用できるとされています(Form 10-K、2025年度)。
収益の仕組み
同社は、収益を「調査」「コンサルティング」「イベント」の3つに分けています。中心は調査で、契約価値(CV)の対象となる製品が、ほぼ調査の収益のすべてを占めると説明しています。
- 入り口:調査の購読契約。契約期間は通常12か月または24か月で、収益は契約期間にわたって計上されます。
- 課金:契約価値は、有効な契約の年間価値の合計として定義されています。購読に含まれるイベントチケットやアナリストとの相談などは、提供時に収益が計上されます。
- 拡張:コンサルティングは固定料金の案件、イベントはチケットとスポンサーシップが中心で、顧客は、コンサルティングを単独で、または購読を補うために購入すると説明されています。同社は、顧客が成果に結びつけるまでの時間を縮める活動を、維持率の向上にも位置づけています。
数字で確かめる
- 2025年の売上高は396.9百万ドルで、前年から8%減りました。内訳は、調査が295.6百万ドル(7%減)、コンサルティングが88.2百万ドル(9%減)、イベントが13.1百万ドル(29%減)です(Form 10-K、2025年度)。購読とそれ以外の売上が、そろって縮小していることが読み取れます。
- 契約価値は、2025年12月末で292.4百万ドルと、前年末の311.9百万ドルから6%減りました。顧客数は1,797社で、前年の1,942社から7%減っています(Form 10-K、2025年度)。契約の縮小と、顧客数の減少が同時に起きていることが読み取れます。
- 顧客維持率は77%で、前年の73%から4ポイント上昇しました。契約額ベースの維持率(wallet retention)は87%で、前年の89%から2ポイント下がっています(Form 10-K、2025年度)。残る顧客は増えても、契約額の拡張は伸びていないことが読み取れます。
- 同社は、顧客維持率の上昇を、維持率向上の取り組みと、「AI Access」製品の投入によるものと説明しています(Form 10-K、2025年度)。AI関連の製品が、契約の更新理由として位置づけられていることが読み取れます。
- 2025年に、のれん減損損失として110.7百万ドルを計上しました。純損失は119.4百万ドルでした(Form 10-K、2025年度)。契約の縮小が、財務の再評価にもつながっていることが読み取れます。
Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか
ここからはOtsumuの考察です。この事例は、継続課金の事業が「一度つくれば安定する」わけではないことを示していると読めます。購読の価値は、読み物としての情報そのものと、それを自社の判断に使うための助言や場の組み合わせでできています。同社は、競合として、検索サービスやAI(大規模言語モデル)などの料金のかからない情報源を挙げています。情報が安く手に入るほど、購読の価値は「情報」から「判断を支える仕組み」へ移ると考えられます。
同社は、AIと人の専門性の組み合わせを自社の強みとして説明しています。AI経由で調査に届けることは、日常の利用を増やし、更新の理由づくりに役立つ可能性があります。ただし、維持率の上昇が、契約価値の回復にまだ結びついていない点には注意が必要です。維持率と契約額の両方を見ないと、状況を読み違える恐れがあります。
Gartnerのような同業の事例と比べると、同じ購読型でも、契約価値の動きは企業によって異なります。自社の継続契約が、顧客数で支えられているのか、一社あたりの契約額で支えられているのかを分けて見ることが、立て直しの出発点になりそうです。
自社事業に持ち帰る問い
- 自社の継続契約は、顧客数の増減と、一社あたりの契約額の増減のどちらで動いているでしょうか。
- 料金のかからない情報やAIが増えたとき、顧客が自社に払い続ける理由は何でしょうか。
- 更新率が保たれていても、契約額が伸びていない場合に、何を追加すれば拡張に結びつくでしょうか。
小さく試すなら
- 継続契約の顧客一覧から、直近2年の更新、契約額の増減、解約を、顧客ごとに並べます。
- 「顧客数の変化」と「一社あたり契約額の変化」を分けて集計し、縮小の原因がどちらにあるかを確認します。
- 契約額が下がった顧客と、上がった顧客の数社に、使い方と、更新で重視した理由を聞き取ります。
- 2〜4週間のうちに、聞き取りで多かった理由を一つ選び、契約の内容や提供の仕方を小さく変える案を、1枚にまとめて検証の対象にします。
関連するビジネスモデル
資料の位置づけ
企業・サービス:Forrester Research, Inc./調査(研究)・コンサルティング・イベント。参照資料:Form 10-K(2025年度、2025年12月31日終了年度)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。
参考資料と編集について
上記の公開資料(目論見書・年次報告書・企業の公式発表など)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。
執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.10.25