分類:企業事例 › ソフトウェア・SaaS
この事例の要点
- Fortinetは、ネットワークとセキュリティを一体で提供する自社のプラットフォーム「Security Fabric」を、機器の販売と、更新・サポートのサービスの二つで収益化しています。
- FY2025の売上のうち、サービス収益が約3分の2を占めます。機器を売った後に続く契約が、売上の中心になっていることが読み取れます。
- 販売は、ディストリビューターを通じてリセラーやサービス事業者へ届く二層構造です。自社で直接多数の顧客と契約する形とは異なります。
どんな事業か
Fortinet, Inc.は米国の企業で、普通株式をNasdaqに上場しています(Form 10-K、FY2025〔2025年12月31日終了年度〕)。同社は自社を、ネットワークとセキュリティの融合を進めるサイバーセキュリティ企業と位置づけています。プラットフォームは「Fortinet Security Fabric」で、セキュアネットワーキング、統合SASE、AI活用のセキュリティ運用(SecOps)にまたがります。統一されたOSであるFortiOSと、ネットワークファイアウォールの中核であるFortiGateが基盤です(Form 10-K、FY2025)。
販売は主に二層の流通モデルです。同社がディストリビューターに販売し、ディストリビューターがリセラーやサービス事業者(MSSP)に販売します。最終顧客は100を超える国にいると記載しています。従業員数は2025年12月31日時点で15,109人です(Form 10-K、FY2025)。
収益の仕組み
収益は、製品収益とサービス収益に分かれます。
- 入り口:ファイアウォールなどの機器(製品)の販売。ディストリビューターとリセラーの網を通じて、顧客の拠点に届きます。
- 課金:機器の売上に加え、セキュリティの更新情報や技術サポートなどのサービスを契約として販売します。
- 継続:サービス収益は契約期間にわたって均等に計上され、期間は通常1〜5年です。更新が続くことで、機器を売った後も売上が積み上がります。
同社は、サービス収益が従来から売上全体の大きな割合を占めてきたと記載しています(Form 10-K、FY2025)。
数字で確かめる
- FY2025の売上高は6,799.6百万ドルで、FY2024の5,955.8百万ドルから増えました。差額を前年で割ると約14.2%の増加です(Form 10-K、FY2025)。規模の大きな事業でも、1割を超える成長を保っていることが読み取れます。
- 製品収益は2,218.4百万ドル(売上の33%)、サービス収益は4,581.2百万ドル(売上の67%)です。FY2024は製品1,908.7百万ドル(32%)、サービス4,047.1百万ドル(68%)でした(Form 10-K、FY2025)。売上の3分の2が、機器ではなく契約から生まれていることが読み取れます。
- 繰延収益(契約済みで、まだ売上に計上していない分)は、2025年に7,115.8百万ドル、2024年に6,360.9百万ドルです(Form 10-K、FY2025)。今後の売上計上につながる契約残が、年を追って積み上がっていることが読み取れます。
- 同社が非GAAPの指標として示す請求額(Billings)は、2025年に7,553.7百万ドル、2024年に6,532.5百万ドルです(Form 10-K、FY2025)。請求ベースでも拡大していることが読み取れます。
- 2025年12月31日時点の売掛金のうち、1社のディストリビューターが32%、6社の合計が67%を占めます(Form 10-K、FY2025)。流通網が少数のディストリビューターに集中していることが読み取れます。
Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか
ここからはOtsumuの考察です。この事業は、ハードウェア+サービス、サブスクリプション、代理店販売の型が重なっていると読めます。機器は、顧客の社内に置かれる入口です。一度置かれると、更新情報やサポートの契約が続く理由ができます。サービス収益が3分の2を占めるという数字は、機器を売ること自体より、置いた機器を使い続けてもらう契約が事業の中心にあることを示していると考えられます。
契約期間が1〜5年と長いことも、設計の要だとOtsumuは見ます。繰延収益が積み上がると、先の売上が見通しやすくなります。一方で、顧客にとっては、契約を続ける価値を実感できなければ更新されません。更新の理由を、機器の性能ではなく、更新される情報の鮮度や運用の手間の軽減に置くことが、継続の土台になると読めます。
トレードオフは、販売が流通網に依存することです。少数のディストリビューターに売掛金が集中している点は、その表れと読めます。顧客を自分で把握しにくくなる代わりに、広い市場に届く、という交換になっています。
自社事業に持ち帰る問い
- 自社が一度売った製品や成果物の後に、続けて必要になる更新や運用の仕事は何でしょうか。
- その継続契約の価値を、顧客は製品そのものと切り離して理解しているでしょうか。
- 販売を第三者に任せるとき、顧客との接点をどこまで自社に残すべきでしょうか。
小さく試すなら
- 過去の顧客のうち、納品後に問い合わせや追加依頼があった件数と内容を、直近1年分で洗い出します。
- 問い合わせのうち、毎回似た内容のものを抜き出し、定期的に提供できる更新・点検・サポートの形にまとめます。
- その内容を月額または年額の契約として、簡単な1枚の案にします。
- 2〜4週間のうちに、過去の顧客数社に案を見せ、継続して払う価値があるか、どの範囲なら払うかを聞き取ります。語られなければ、範囲を見直します。
関連するビジネスモデル
資料の位置づけ
企業・サービス:Fortinet, Inc. / Security Fabric。参照資料:Form 10-K(FY2025、2025年12月31日終了年度)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。
参考資料と編集について
上記の公開資料(企業の決算短信または年次報告書)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。
執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.10.25