分類:企業事例 › 証券・保険・資産運用
この事例の要点
- Futu Holdingsは、取引執行、信用取引・貸株、ファンド等の金融商品の販売を中核に、市場データ、投資家コミュニティ、投資教育を組み合わせたオンライン金融サービスを運営しています(Form 20-F、2025年12月期)。
- 2025年の収益は228億4,690万香港ドル(前期比68.1%増)で、売買手数料、利息収入、その他収入の3つで構成されます(Form 20-F、2025年12月期)。
- 同社は、金利の水準が収益に影響する重要な要因であり、金利が下がると利息収入と総収益に悪影響が出うるとリスクとして開示しています(Form 20-F、2025年12月期)。
どんな事業か
Futu Holdings Limitedは、ケイマン諸島で設立された持株会社で、主たる事務所は香港にあります。ADSはナスダックに上場しています。創業者のLeaf Hua Li氏が2012年に設立したFutu Securitiesが香港証券先物委員会の免許を取得して以来、オンライン証券を軸に事業を広げてきました。同社は、証券会社として出発し、今では取引、金融商品の販売、市場データ、コミュニティ、投資教育、法人向けサービスを統合した金融サービス事業者になったと説明しています(Form 20-F、2025年12月期)。
主要なアプリは2つあります。Futubullは主に香港と中国本土のユーザー向けで、香港、米国、日本、シンガポールの市場で取引できます。Moomooはその国際版で、米国、シンガポール、オーストラリア、日本、カナダ、マレーシアなどで、各国のライセンスを持つ現地法人を通じて提供されています。多くの付加価値サービスは無料で提供されていると記載されています(Form 20-F、2025年12月期)。
収益の仕組み
同社は、ユーザー(アプリの登録者)と、そのうち口座を開いた顧客(クライアント)を区別して管理しています。収益は次のように積み上がります(Form 20-F、2025年12月期)。
- 入り口:アプリ上の無料の情報、コミュニティ(NiuNiu/Moo Community)、投資教育。アプリ内のリンクからオンラインで口座開設を申し込めます。
- 課金その1(売買手数料):取引の執行に対する手数料で、取引量に連動します。
- 課金その2(利息収入):信用取引・貸株の貸出利息と、顧客資産に対する銀行預金の利息などです。顧客が担保にする有価証券の価値に応じて、貸出枠が決まります。
- 課金その3(その他収入):ファンドなどの金融商品の販売に対する手数料(Money Plusブランド)や、為替サービスの収入です。
- 継続:口座に預けられた資産と貸出残高が積み上がるほど、利息収入が増える構造です。
貸出の資金調達や、貸し倒れのリスク管理も事業の一部です。同社は、担保の価値が貸出額を下回った場合に追加担保(マージンコール)を求めるなどの仕組みを説明しています(Form 20-F、2025年12月期)。
数字で確かめる
- 2025年の収益228億4,690万香港ドルの内訳は、売買手数料等が105億7,270万香港ドル(前期比74.9%増)、利息収入が104億4,160万香港ドル(56.6%増)、その他収入が18億3,260万香港ドル(108.6%増)です(Form 20-F、2025年12月期)。手数料と利息がそれぞれ収益の約半分を占め、金融商品の販売を含むその他が1割弱であることが読み取れます。
- 売買手数料の伸びは、取引高が2024年の7.75兆香港ドルから2025年の14.68兆香港ドルへ89.4%増えたことが主因で、加重平均の手数料率は7.8bpsから7.2bpsに下がりました(Form 20-F、2025年12月期)。手数料率が下がっても、取引量の増加で収益が伸びたことが読み取れます。
- 信用取引・貸株の利息収入は2025年に63億6,870万香港ドルで総収益の27.9%、銀行預金の利息は37億5,930万香港ドルで16.5%です(Form 20-F、2025年12月期)。両方を足すと総収益の約44%が金利に連動する収入であることが読み取れます。
- 信用取引・貸株の残高は、2023年末の331億香港ドルから2025年末の677億香港ドルに増えました(Form 20-F、2025年12月期)。顧客の取引と資産の増加が、貸出残高の拡大につながっていることが読み取れます。
- 入金のある口座数は2023年末の1,710,106から2025年末の3,365,414に、顧客資産残高は4,856億香港ドルから1兆2,330億香港ドルに増え、2025年の純利益は113億香港ドルでした(Form 20-F、2025年12月期)。顧客基盤の拡大が、収益と利益の増加と並んでいることが読み取れます。
Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか
ここからはOtsumuの考察です。この事例は、情報とコミュニティを無料で配り、利用者が口座を開いた後に、取引・貸出・預かり資産・金融商品の販売で収益化する設計だと読めます。入り口で課金しないため集客がしやすく、口座に資産が積み上がるほど、一人あたりの収益の機会が増えます。
収益の質にも特徴があります。売買手数料は市場の活況に左右され、利息収入は金利水準と貸出残高に左右されます。2つの収益が別の要因で動くため、片方が弱い局面を補える一方、2025年のように市場が強いときは両方が同時に伸びます。手数料率が下がっても取引量で補えているのは、顧客数と資産が増えたからだと考えられます。
注意点は、貸出を伴う事業では、信用リスクと資金調達の安定が土台になることです。同社もこの点をリスク要因として詳しく開示しています。金融の特性上、規制と免許が各国で異なる点も、拡大の速度を左右する条件だと考えられます。
自社事業に持ち帰る問い
- 自社の無料で提供できる情報や場は何で、それが有料の取引の入り口になっているでしょうか。
- 顧客が自社に預けている「資産」「データ」「在庫」などの残高に対して、継続的に収益を得る仕組みはつくれるでしょうか。
- 収益が1つの外部要因(市場、金利、季節など)に偏っていないでしょうか。
小さく試すなら
- 自社の収益を、取引ごとに発生するものと、残高や保有に応じて発生するものに分けて書き出します。
- 無料で提供している情報や場がある場合は、それを使った人のうち、有料取引に進んだ人の割合を直近の記録から数えます。
- 無料から有料への移行がうまくいっている顧客3〜5社に、何がきっかけで有料に進んだかを聞き、共通点を整理します。
- 2〜4週間で、共通点にあたる行動(例:特定の資料を読む、特定の機能を試す)を促す案内を、無料利用者の一部に出し、有料への移行が増えるかを確認します。
関連するビジネスモデル
資料の位置づけ
企業・サービス:Futu Holdings Limited / Futubull・Moomoo。参照資料:Form 20-F(2025年12月期)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。
参考資料と編集について
上記の公開資料(目論見書・年次報告書・企業の公式発表など)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。
執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.10.25