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Getaround, Inc.「個人間カーシェア」に学ぶ手数料とリスク管理の事業設計

米国のカーシェアGetaroundが、車の持ち主と利用者を結び、手数料と利用者側の手数料で稼ぐ仕組みを、2023年12月期の10-K(SEC提出書類)から解説。取扱高・利用回数・損失の動きを確かめます。

分類:企業事例 › マーケットプレイス

この事例の要点

  • Getaround, Inc.は、車の持ち主(ホスト)と利用者(ゲスト)を結ぶ個人間カーシェアのマーケットプレイスで、手数料と利用者から受け取る諸費用を収益にします(Form 10-K、2023年12月期)。
  • 2023年の売上は72,680千ドル(前年比22%増)ですが、増加のうち19.3百万ドルは買収したHyreCar事業の分です。利用回数は938千回で、前年の941千回とほぼ同水準でした(Form 10-K、2023年12月期)。
  • 純損失は113,946千ドルで、売上を大きく上回る損失を計上しています。成長の質を、買収分を除いて見る必要がある事例です(Form 10-K、2023年12月期)。

どんな事業か

Getaround, Inc.は米国の上場企業で、2011年から個人間カーシェアのマーケットプレイスを運営しています。2023年12月末時点で、約200万人のユニークなゲストと約80,000台のアクティブな車を、8か国の1,000を超える都市で支えています(Form 10-K、2023年12月期)。

車にはGetaround Connectと呼ぶIoT機器、または互換のある他社機器が取り付けられ、ゲストは鍵の受け渡しなしに予約・解錠・返却ができます。同社はこの形を、自社で車を持たず、運営に人手を要さない「アセットライト」な事業と説明しています(Form 10-K、2023年12月期)。

収益の仕組み

同社は、ホストが受け取る金額と、ゲストが支払う金額の差で収益を得ます。10-Kの例では、1回の利用でゲストの利用料が100ドル、利用に伴う諸費用(リスクに応じた手数料を含む)が25ドル、ホストの利用料が100ドルのとき、同社はホストから受け取る手数料40ドルと諸費用25ドルを合わせた65ドルを収益とします(Form 10-K、2023年12月期)。

  • 入り口:ホストが車を登録し、IoT機器を取り付けます。
  • 課金:ホストから受け取る手数料、ゲストから受け取る諸費用、IoT機器の月額利用、駐車場の賃貸収入。
  • 継続:ダイナミックプライシング(需要に応じた価格調整)と、ゲストの信用評価Getaround TrustScoreで、価格とリスクを調整します。
お金を払う人・対価ホスト:利用に応じた手数料ゲスト:リスクに応じた諸費用ホスト:IoT機器の月額利用や駐車場賃貸個人間カーシェアの場と信用評価の提供
図1 Getaroundの収益の流れ(Form 10-K、2023年12月期にもとづく整理)。

数字で確かめる

  • 売上:72,680千ドル、前年の59,455千ドルから22%増。うちHyreCar事業の取り込みによる19.3百万ドルを除くと、米国のカーシェアは減少しています(Form 10-K、2023年12月期)。買収を除くと成長が鈍っていることが読み取れます。
  • 取扱高(GBV):203,904千ドル、前年の175,489千ドルから16%増。HyreCarの寄与は36.9百万ドルです(Form 10-K、2023年12月期)。取扱高の増加も、大半が買収分であることが読み取れます。
  • 利用回数:938千回(前年は941千回)(Form 10-K、2023年12月期)。回数ではほぼ横ばいで、単価の改善が取扱高を押し上げたことが読み取れます。
  • TrustScoreの影響:リスクの高い利用者の予約を抑えたことで、米国のカーシェア売上が一時的に減ったと説明しています(Form 10-K、2023年12月期)。収益より損失の抑制を優先した判断が読み取れます。
  • 純損失:113,946千ドル、前年は136,065千ドル(Form 10-K、2023年12月期)。損失幅は縮小したものの、売上規模に対して大きいことが読み取れます。

Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか

ここからはOtsumuの考察です。この事業は、持ち主が遊ばせている車を貸し出すことで供給を増やし、手数料を取る「遊休資産のシェア」の型で読めます。車を自社で持たなくてよい点はコスト構造の強みですが、ホストの車を貸す以上、事故や不正のリスクを誰が負うかが収益に直結すると考えられます。ゲストから受け取る諸費用に「リスクに応じた手数料」を含め、さらにTrustScoreでリスクの高い利用者を抑えるのは、そのためだと読めます。

一方で、利用回数が横ばいでも取扱高が伸びたのは、リスクに基づく価格設定の改善で1回あたりの金額が増えたためと同社は説明しています。この型は、数を追うだけでなく、1回あたりの収益とリスクのバランスを調整する運営力が問われると読めます。

収益の成長の大半が買収によるため、マーケットプレイスの自力の成長は、買収分を分けて見る必要があります。車の供給(ホスト)と需要(ゲスト)が同時に増える好循環は、損失が続く間は未達の状態にあると考えられます。

自社事業に持ち帰る問い

  • 自社が仲介する取引で、トラブルの費用を誰が負う設計になっていますか。
  • 利用者の質を見分けて、取引の入り口で調整する方法はありますか。
  • 売上の伸びのうち、自力の成長と買収・提携による分を分けて見ていますか。

小さく試すなら

  1. 過去1年のトラブル(返金・クレーム・未払い)を一覧にし、発生した利用者の共通点を3つ挙げます。
  2. その共通点を使った簡易的なチェックリストを作り、新規の申込を2〜4週間、そのリストで確認します。
  3. リストで引っかかった申込について、追加の確認や前払いを設けた場合の離脱率を記録します。
  4. トラブルの発生率と申込数の変化を比べ、基準を続けるか決めます。

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資料の位置づけ

企業・サービス:Getaround, Inc. / 個人間カーシェアのマーケットプレイス。参照資料:Form 10-K(2023年12月期)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。

参考資料と編集について

上記の公開資料(目論見書・年次報告書・企業の公式発表など)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。

執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.10.25

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