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この事例の要点
- GRAVITYは、MMORPG「ラグナロクオンライン」と、そのコンテンツをもとにしたゲームから、売上の81.4%を得ています(Form 20-F、2025年12月期)。
- 2025年の売上高は5,605億ウォンで前年比11.9%増。一方で営業利益は774億ウォンで同9.4%減となり、売上総利益率は38.7%から35.0%へ下がりました(Form 20-F、2025年12月期)。
- 海外のライセンス料とロイヤルティは売上の8.9%で、そのうち81.7%が特定の1社(Nuverse)との契約によるものです(Form 20-F、2025年12月期)。
どんな事業か
GRAVITY Co., Ltd.は、韓国(ソウル)に本社を置き、ADS(1ADSが普通株式1株)をNASDAQ Global Marketに上場しています。日本のゲーム会社であるGungHoが議決権の59.3%を持つ支配株主で、同社は「支配会社」(controlled company)に該当します(Form 20-F、2025年12月期)。
主力は、アクション・アドベンチャー型のMMORPG「ラグナロクオンライン」です。そこから派生した、モバイルの「Ragnarok M: Classic」「Ragnarok Origin」「Ragnarok X: Next Generation」「Ragnarok M: Eternal Love」などが続きます。台湾や東南アジアなど、市場によっては海外の事業者にライセンスし、運営と配信を任せています(Form 20-F、2025年12月期)。
収益の仕組み
課金方式は、時代とともに変わってきました。当初は利用期間に応じた月額課金だけでしたが、2006年12月にアイテム課金(マイクロトランザクション)を導入しました。2007年1月からは、アイテム課金を前提とした無料サーバーも全市場で認めています(Form 20-F、2025年12月期)。
- 入り口:無料でも遊べるサーバーやモバイル版で、まず参加者を広げる。
- 課金:ゲーム内のアイテム購入が中心。自社運営の市場では、売上を直接得る。
- ライセンス:海外の事業者には、運営権を与え、売上の一定割合をライセンス料・ロイヤルティとして受け取る。
同社は、自社運営のモバイル版を拡大するほど、売上は伸びる一方で、従来のオンラインゲームほどの利益率は出にくいと説明しています(Form 20-F、2025年12月期)。
数字で確かめる
- 2025年の売上高は5,605億ウォン。内訳はオンラインゲームが903億ウォン(前年比17.3%増)、モバイルゲームが4,552億ウォン(同12.2%増)、その他が150億ウォン(同17.6%減)でした(Form 20-F、2025年12月期)。売上の約8割がモバイルである構成が読み取れます。
- 2025年に開始したモバイルの「Ragnarok M: Classic」は、売上の27.6%(1,546億ウォン)を占めました(Form 20-F、2025年12月期)。新作1本が全体の四分の一超を占めるほど、作品への依存が強いことが読み取れます。
- 営業利益は2025年に774億ウォンで、前年の854億ウォンから9.4%減り、営業利益率は17.0%から13.8%へ下がりました(Form 20-F、2025年12月期)。売上が増えても、費用の増加で利益が伸びていないことが読み取れます。
- 「ラグナロクオンライン」本体の売上は850億ウォン(売上の15.2%)で、前年は713億ウォン(同14.2%)でした(Form 20-F、2025年12月期)。オンラインゲームとして続くIPが、いまも売上を生んでいることが読み取れます。
- モバイルの海外ライセンス料・ロイヤルティは2025年に売上の8.9%(2024年は11.4%)で、その81.7%がNuverseとの契約によるものでした。同社はこの依存をリスク要因に挙げています(Form 20-F、2025年12月期)。ライセンスの収益が、特定の相手に集中していることが読み取れます。
Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか
ここからはOtsumuの考察です。この事業は、一つの世界観(IP)を、プラットフォーム、地域、運営主体を変えて繰り返し使う設計だと読めます。新しい世界観を一から作る投資と比べて、すでにファンがいる世界観を新しい形に作り直す方が、立ち上がりの不確実性は小さいと考えられます。
他方で、同じIPへの依存はリスクにもなります。売上の8割超がラグナロク由来であり、IPの人気が落ちたときの影響は大きいと同社自身が記載しています。ライセンスを使えば、自社で運営する負担を減らし、地域を広げやすくなりますが、収益の質は相手の運営力に左右されます。自社運営は利益の取り分が増える反面、費用も負担します。2025年の利益率の低下は、自社運営と費用の関係を示す例と読めます。
IPを持つ事業にとって大切なのは、「どこまでを自分で運営し、どこからを他社に任せるか」の線引きだと見ます。それは、収益の取り分、リスク、スピードの三つを同時に決める判断だからです。
自社事業に持ち帰る問い
- 自社の商品や世界観のうち、形を変えて再利用できるものは何でしょうか。
- 自社で運営する範囲と、他社に任せて使用料を得る範囲は、どこで分けるのが妥当でしょうか。
- 売上の上位1つの商品・相手への依存度は、どの程度でしょうか。
小さく試すなら
- 直近1年の売上を商品・ブランド別に並べ、上位1つが占める比率を出します。
- 最も売れている商品について、別の形(地域、対象、提供方法)に作り直した場合の案を3つ書き出します。
- そのうち1つについて、他社に運営を任せる場合と自社で行う場合の、取り分と費用を概算で比べます。
- 2〜4週間のうちに、候補となる相手1〜2社に簡単な打診を行い、条件面での反応を確かめます。
関連するビジネスモデル
資料の位置づけ
企業・サービス:GRAVITY Co., Ltd./ラグナロクオンラインおよび関連ゲーム。参照資料:Form 20-F(2025年12月期)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。
参考資料と編集について
上記の公開資料(目論見書・年次報告書・企業の公式発表など)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。
執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.10.25