分類:企業事例 › メディア・広告・ゲーム
この事例の要点
- 株式会社コーエーテクモホールディングスは、エンタテインメント事業を中心に、アミューズメント事業、不動産事業、その他事業を持っています。2026年3月期の連結売上高88,393百万円のうち、エンタテインメント事業が82,541百万円を占めます(令和8年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。
- エンタテインメント事業では、「シブサワ・コウ」「ω-Force」「Team NINJA」「ガスト」などのブランドごとに、パッケージゲームとスマートフォンゲームを展開しています(令和8年3月期 決算短信)。
- 自社のゲームの開発に加え、IP事業として、同社がIPを許諾したスマートフォンゲーム5タイトルがサービスを開始したと説明されています(令和8年3月期 決算短信)。
どんな事業か
株式会社コーエーテクモホールディングス(証券コード3635、上場取引所は東京証券取引所)は、ゲームソフトの開発・販売を中心とするグループです。令和8年3月期は、第4次中期経営計画の初年度として「成長のための基盤づくり」をテーマに施策を進め、パッケージゲーム14タイトルを発売し、オンライン・モバイルゲームの新作2タイトルの配信を開始したと説明しています(令和8年3月期 決算短信)。
エンタテインメント事業のほか、アミューズメント事業(アミューズメント施設の運営、スロット・パチンコの液晶ソフトの受託開発)、ライブハウス型ホールを運営する不動産事業、ベンチャーキャピタルを含むその他事業があります。同社は、長期の目標として、世界のデジタルエンタテインメント企業の中で営業利益額世界トップ10となることを目指すと述べています(令和8年3月期 決算短信)。
収益の仕組み
決算短信の説明から、構造を次のように整理できます。
- 入り口:ブランドごとの新作の発売。「Team NINJA」の『仁王3』は、世界販売本数がシリーズ最速で100万本を達成したとされています。
- 積み上げ:既存の作品への追加展開。『真・三國無双 ORIGINS』は、追加の大型ダウンロードコンテンツの配信と、Nintendo Switch 2版の発売を行いました。
- 継続:スマートフォンゲーム。『三國志 覇道』と『信長の野望 覇道』は、引き続き収益に貢献したと説明されています。
- 許諾:IP事業。『三国志・戦略版』(国内では『三國志 真戦』)は、引き続き収益に寄与したとされています。
- 受託と周辺:スロット・パチンコの液晶ソフトの受託開発(5タイトルが稼働開始)、施設運営、不動産の賃貸などです。
数字で確かめる
- 連結業績:売上高88,393百万円(前年同期比6.3%増)、営業利益37,168百万円(同15.7%増)、経常利益57,000百万円(同14.0%増)で、売上高・経常利益・当期純利益は過去最高と説明されています(令和8年3月期 決算短信)。売上の伸びより利益の伸びが大きいことが読み取れます。
- 売上高営業利益率:42.0%(令和8年3月期 決算短信)。ゲームの開発・販売で高い利益率を実現していることが読み取れます。
- エンタテインメント事業:売上高82,541百万円、セグメント利益36,642百万円です(令和8年3月期 決算短信)。連結営業利益の大半が、この事業から生まれていることが読み取れます。
- 他の事業:アミューズメント事業の売上高は4,782百万円(セグメント利益802百万円)、不動産事業は1,299百万円(同327百万円)、その他事業は394百万円(セグメント損失604百万円)です(令和8年3月期 決算短信)。規模は小さく、補完的な位置づけであることが読み取れます。
- 財政状態:総資産313,662百万円、自己資本比率86.7%です(令和8年3月期 決算短信)。大きな自己資本を持って事業を営んでいることが読み取れます。なお、経常利益が営業利益を上回るのは、同社が「営業外収支は金融市場の動向を注視しながら機動的にポートフォリオの組み換えを行い、利益を計上した」と説明している影響です。
Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか
ここからはOtsumuの考察です。この事業は、コンテンツIPの多面展開とライセンスの型が重なっていると読めます。決算短信には、「シブサワ・コウ」「ω-Force」「Team NINJA」「ガスト」「ルビーパーティー」「midas」など、複数のブランドが並んでいます。ブランドごとに愛好者の層が異なれば、一つの作品の成否に会社全体が左右されにくくなります。また、同じ題材を、パッケージ、ダウンロードコンテンツ、スマートフォンゲーム、他社へのIP許諾と、形を変えて提供しています。
重要なのは、自社で作る部分と、他社に任せる部分を分けている点だとOtsumuは見ます。IP許諾では、スマートフォンゲームの開発や運営を他社が担い、同社は許諾する側に回ります。自社で投資する負担を抑えながら、IPが使われる場所を増やせる可能性があります。ただし、許諾先の成果は自社でコントロールしにくく、ブランドの品質をどう保つかが課題になると考えられます。
トレードオフは、開発に時間と人手がかかること、そして次期の見通しが示すように、開発費や人的資本への投資が利益を圧迫しうることです。令和9年3月期は営業利益320億円(13.9%減)を見込むと同社は述べています。なお、経常利益の一部が金融運用の成果である点は、事業の力とは分けて見る必要があります。
自社事業に持ち帰る問い
- 自社の商品群は、顧客の層や用途ごとに、ブランドや看板を分けて育てられているでしょうか。
- 自社が持つ知見やコンテンツを、他社に使ってもらう形(許諾、提携)で広げる余地はないでしょうか。
- 本業の利益と、本業以外の収益を、分けて評価できているでしょうか。
小さく試すなら
- 自社の商品やコンテンツを、顧客層・用途ごとに分類し、売上と利益の大きいものを確認します。
- 特に反応のよい1つについて、顧客が気に入っている理由を、顧客の数人から聞き取ります。
- その理由を活かして、別の形(資料、講座、他社との共同企画など)で提供する案を作り、数社に見せます。
- 2〜4週間の聞き取りで関心を示す相手がいれば、小さく試験提供し、費用と成果を記録します。いなければ、題材の選び直しに戻ります。
関連するビジネスモデル
資料の位置づけ
企業・サービス:株式会社コーエーテクモホールディングス / エンタテインメント事業。参照資料:令和8年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)(令和8年4月27日)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。
参考資料と編集について
上記の公開資料(企業の決算短信または年次報告書)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。
執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.10.25