分類:企業事例 › 教育・人材・BtoB
この事例の要点
- Nerdyは、人間の講師とAIを組み合わせたライブ型の学習プラットフォームを運営し、個人向けには「ラーニング・メンバーシップ」の会員制で提供しています(Form 10-K、FY2025)。
- 講師は個人事業主として契約し、教えたセッションに応じて収入を得ます。2025年の稼働講師は約1万6,000人でした(Form 10-K、FY2025)。
- FY2025は、売上高と会員数が前年を下回る一方、会員1人あたりの月次収益は上がり、粗利率は下がりました(Form 10-K、FY2025)。
どんな事業か
Nerdy Inc.は、NYSE(ティッカー:NRDY)に上場する企業です(Form 10-K、FY2025)。同社は自らを、人間の専門家とAIを組み合わせた、次世代のライブ型の個別指導・学習支援のプラットフォームと説明しています。中核の事業はVarsity Tutors LLCで、米国のライブ型オンライン家庭教師・クラスのプラットフォームの一つと記載されています。
提供先は二つに分かれます。個人の学習者向けには、マンツーマン指導、クラス、自習ツール、適応型の評価をまとめて使える会員制の購読を提供します。学校や教育機関向けには「Varsity Tutors for Schools」として、集中的な個別指導や「Live+AI」を提供します(Form 10-K、FY2025)。
収益の仕組み
同社は、学習者がプラットフォーム上のサービスのためにラーニング・メンバーシップを購入する、購読型の事業だと説明しています(Form 10-K、FY2025)。
- 入り口:学習者が会員になり、講師とのセッションやクラスを使い始めます。
- 供給側:講師は個人事業主として契約し、教えたセッションに応じて収入を得ます。
- 課金:個人向けは会員制の購読、学校向けは製品群の提供です。2023年以降、一部の学校向けの顧客には、数年間無償でプラットフォームを使えるようにしたと記載されています。
数字で確かめる
- 総売上高は、2025年が1億7,899万ドル、2024年が1億9,023万ドルで、6%減りました(Form 10-K、FY2025)。売上が前年を下回ったことが読み取れます。
- 個人向けの売上は、2025年が1億5,074万ドル(全体の84%)、2024年が1億5,423万ドルでした。学校向けは2,761万ドル(同15%)で、前年の3,528万ドルから22%減っています(Form 10-K、FY2025)。減少幅は学校向けのほうが大きいことが読み取れます。
- アクティブ会員数は、2025年末が3万3,200人、2024年末が3万7,500人で、11%減りました。月ごとの会員1人あたり収益(ARPM)は、2025年末が364ドルで、前年の302ドルから21%上がっています(Form 10-K、FY2025)。会員は減ったものの、1人あたりの金額は上がっていることが読み取れます。
- 粗利率は、2025年が58%、2024年が67%でした。2025年には、内部利用のソフトウェアの一部を放棄する7,757千ドルの費用が含まれています(Form 10-K、FY2025)。収益の質が一時的に下がったことが読み取れます。
- 2025年の純損失は6,095万ドルで、2024年の6,714万ドルより小さくなりました。同社は新しいAI中心のコードベースでプラットフォームを作り直したと記載しています(Form 10-K、FY2025)。損失は続いており、基盤の作り直しを進めていることが読み取れます。
Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか
ここからはOtsumuの考察です。この事業は、購読とマッチング(講師と学習者をつなぐ)を重ねた構造と読めます。講師を個人事業主として柔軟に確保し、学習者には会員制で定期的な収益にする。供給側の固定費を抑えつつ、需要側では継続を狙う設計だと考えられます。
ただし、会員制の事業は、会員数と単価の両方が成り立って初めて安定します。今回の数字は、会員数が減り、単価が上がるという組み合わせです。これは、利用の多い会員に絞られた結果とも、価格の見直しの結果とも読めますが、理由は資料の範囲では特定できません。また、供給側の質と量は、粗利率にも影響します。粗利率の低下が、講師への支払いや一時的な費用と関係している可能性があります。
トレードオフは、AIを使って提供の効率を上げようとする一方で、人が教える価値をどこに残すかです。基盤の作り直しが、費用の抑制と利用体験の向上につながるかは、今後の開示で確かめる必要があります。
自社事業に持ち帰る問い
- 自社のサービスで、供給側(人・設備)の固定費を抑えながら、継続的な収益を得る形にできているでしょうか。
- 会員や契約の数が減ったとき、1人あたりの単価が上がることは、よい兆候でしょうか。それとも注意すべき兆候でしょうか。
- 人が提供する価値と、AIや仕組みに任せる範囲の境目を、どこに引いているでしょうか。
小さく試すなら
- 直近の契約者について、月ごとの人数と1人あたりの金額を並べ、数と単価のどちらが動いているかを確かめます。
- 利用が多い契約者と少ない契約者の数人に、使い続ける理由と、やめたい(やめた)理由を聞き取ります。
- 提供の工程を並べ、人が担うべき部分と、仕組みで置き換えられそうな部分を分けて書き出します。
- 2〜4週間のうちに、置き換えられそうな工程を一つ選び、一部の顧客で試して、満足度と提供側の手間の変化を記録します。
関連するビジネスモデル
資料の位置づけ
企業・サービス:Nerdy Inc. / Varsity Tutors。参照資料:FY2025(2025年12月期)Form 10-K。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。
参考資料と編集について
上記の公開資料(企業の決算短信または年次報告書)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。
執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.10.25