分類:企業事例 › 通信・データセンター
この事例の要点
- Nokiaは、通信事業者向けのネットワーク機器・ソフトウェアの販売と、特許のライセンス収入という、性格の異なる二つの収益を持っています(Form 20-F、2025年12月期)。
- 2025年12月期の売上は19,889百万ユーロ(前期比3%増)で、特許ライセンスを担うNokia Technologiesは売上1.5十億ユーロ、セグメント営業利益は1.1十億ユーロでした(Form 20-F、2025年12月期)。
- Infinera買収などで、通信事業者に偏っていた顧客を、AI・クラウド事業者まで広げようとしています(Form 20-F、2025年12月期)。
どんな事業か
Nokia Corporationは、フィンランドのエスポー(Espoo)に本社を置く通信機器・技術の会社で、ヘルシンキ市場に上場するとともに、ニューヨーク証券取引所にも登録し、SECにForm 20-Fを提出しています。2025年の平均従業員数は約78,000人で、約130か国で事業を行っています(Form 20-F、2025年12月期)。
同社は2026年1月1日から、事業をNetwork InfrastructureとMobile Infrastructureの二つの主要セグメントに整理しています。Network Infrastructureは、光伝送、IPルーティング・スイッチング、固定アクセスの技術を、通信事業者、重要インフラ向けの企業、AI・クラウド事業者に提供します。Mobile Infrastructureは、モバイルネットワークを担います。別に、Nokia Technologiesが特許を管理し、技術を他社に許諾しています(Form 20-F、2025年12月期)。
収益の仕組み
収益は、設備と権利の二本立てです。設備側は案件ごとの受注で売上が動き、権利側は契約にもとづく継続収入が土台になります。
- 入り口:通信事業者などへのネットワーク機器・ソフトウェアの販売。Network Infrastructureは2025年に8.0十億ユーロ、セグメント営業利益率9.8%でした。
- ソフトウェア:Cloud and Network Servicesは、コアネットワークなどのソフトウェアを提供し、2.6十億ユーロの売上、セグメント営業利益率13.0%でした。
- 権利収入:Nokia Technologiesは、モバイル端末、家電、IoT、自動車、マルチメディア配信向けに、専用のライセンスプログラムを持っています。同社は、特許ライセンス契約の大半を訴訟によらずに結べたと説明しています。
- 継続:2030年までの年間の契約済み継続収入が800百万ユーロ超あると説明しています。自動車、家電、IoT、マルチメディアといった拡大分野のライセンス収入の年間ランレートは200百万ユーロ超です。
(以上、Form 20-F、2025年12月期)
数字で確かめる
- 売上:19,889百万ユーロ、前期は19,220百万ユーロで3%増。Infinera買収が1,258百万ユーロ、為替の影響が約4%の減少要因で、これらを除くとNetwork Infrastructure、特に光ネットワークの伸びが全体を支えたと説明されています(Form 20-F、2025年12月期)。
- Nokia Technologies:売上1.5十億ユーロ、セグメント営業利益1.1十億ユーロ。売上に対する利益の割合が高く、権利収入が収益の安定に寄与していることが読み取れます(Form 20-F、2025年12月期)。
- 特許の規模:26,000を超える特許ファミリー、うち5Gに必須とされるものが8,000超。ライセンスの土台が長年の研究開発の蓄積であることが読み取れます(Form 20-F、2025年12月期)。
- AI・クラウド向けの受注:2025年に2.4十億ユーロ超。通信事業者以外に顧客を広げていることが読み取れます(Form 20-F、2025年12月期)。
- 受注残高:2025年12月31日時点で19.5十億ユーロ(前期末は20.0十億ユーロ)。設備側の将来の売上が、一定の受注残で裏付けられていることが読み取れます(Form 20-F、2025年12月期)。
Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか
ここからはOtsumuの考察です。この事例の学びは、収益の性格が異なる事業を並べて、景気や投資の波を和らげる設計にあります。通信機器は、事業者の設備投資の時期に左右され、案件ごとの競争も激しい事業です。一方で、特許ライセンスは、端末や機器が売れ続ける限り、契約にもとづく収入が続きやすい性格を持ちます。同社が「2030年までの契約済み継続収入」を示しているのは、この安定した土台を示すためだと読めます。
もう一つの動きは、顧客の置き換えです。通信事業者は設備投資の時期が限られますが、AI・クラウド事業者は光ネットワークなどの需要を持つと同社は説明しています。Infinera(光ネットワークの会社)を2.5十億ユーロで取得したのは、その窓口に使える製品を補うためと読めます。事業を二つの主要セグメントに整理した点も、経営の見通しを良くする狙いだと考えられます。
ただし、各セグメントの伸びはそろっていません。開示では、Network Infrastructureの売上が23%増える一方で、Mobile Networksは4%減、Nokia Technologiesは22%減とされています。権利収入は安定した土台である反面、更新の時期次第で動くことも、数字から読み取れます。
自社事業に持ち帰る問い
- 自社の収益のうち、景気や案件の波に左右される部分と、契約にもとづいて続く部分は、それぞれ何割ですか。
- 自社の知見や権利を、設備や案件の売上とは別に、継続収入として貸し出せる可能性はありませんか。
- 現在の顧客とは性格の異なる新しい顧客層に、既存の製品を届ける入り口はありますか。
小さく試すなら
- 直近1年の売上を「単発の案件」と「継続契約」に分け、比率を出します。
- 自社の資料・手順・設計資産のうち、他社が使いたがりそうなものを3つ挙げ、利用条件と料金の案を一枚にまとめます。
- 既存の取引先2〜3社に、その案を見せて、利用したい条件と価格感を聞きます。
- 関心のあった1社と、期間を区切った試験契約を結び、受け取る金額と手間、更新の意向を2〜4週間で確認します。
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資料の位置づけ
企業・サービス:Nokia Corporation / ネットワーク機器と特許ライセンス。参照資料:Annual Report on Form 20-F 2025(2025年12月期)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。
参考資料と編集について
上記の公開資料(目論見書・年次報告書・企業の公式発表など)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。
執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.10.25