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Pacific Biosciences「Revio/Vega」に学ぶ装置の設置と試薬の使用量で稼ぐ事業設計

ロングリード・シーケンサーRevioとVegaを研究機関に設置し、使用に応じた試薬とサービスで収益を得るPacific Biosciencesの事例です。設置台数と消耗品の関係を、Form 10-K(FY2025)から確かめます。

分類:企業事例 › 医療・医薬・ヘルスケア

この事例の要点

  • Pacific Biosciencesは、HiFiロングリード技術にもとづくシーケンシング装置を提供し、2025年12月期の売上高は160.0百万ドル(前年比4%増)でした(Form 10-K、FY2025)。
  • Revio装置の販売台数は61台と、前年の97台から減った一方、消耗品の売上は16%増えました。設置済みの装置の使用が、収益を支える構造が読み取れます(Form 10-K、FY2025)。
  • サービス・その他の売上は36%増えました。同社は、Revioの保守契約(サービスコントラクト)の増加を主因に挙げています(Form 10-K、FY2025)。

どんな事業か

Pacific Biosciences of California, Inc.は米国カリフォルニア州メンロパークに本社を置き、Nasdaqに上場している企業です。同社は、HiFiロングリード技術を使い、ヒトの生殖細胞系列の解析、植物・動物の研究、感染症・微生物学、がんなどの用途に向けたシーケンシングの装置と試薬を設計・製造しています(Form 10-K、FY2025)。

主力製品はRevioと、小型のベンチトップ装置Vegaです。製造は、ISO 13485およびISO 9001の認証を受けたメンロパークの施設で行い、一部の部品は外部の委託先から調達しています。部品によっては、供給元が1社に限られるとも記載しています(Form 10-K、FY2025)。

収益の仕組み

収益は、装置の販売、装置を使うたびに消費される消耗品、そして保守などのサービスで構成されます。同社は、成長の方針として、売上の拡大と売上総利益率の改善を掲げています。

  • 入り口:RevioやVegaといった装置を、大学・研究機関・企業に販売します。
  • 課金:シーケンシングを行うたびに必要な試薬やSMRT Cell、用途別のキット(Kinnex、PureTargetなど)です。同社は、新しい化学(SPRQ-Nx)と応用キットで、1サンプルあたりの費用を下げ、利用量を増やす方針を記載しています。
  • 継続:設置台数の増加と、1台あたりの使用量の増加が、消耗品の売上を押し上げます。サービス契約も継続的な収益になります(Form 10-K、FY2025)。
お金を払う人・対価大学・研究機関・企業:装置の購入代金装置の利用者:試薬・SMRT Cell・キットの代金保守などのサービス契約の顧客長鎖シーケンシング装置と消耗品
図1 Pacific Biosciencesの収益の流れ(Form 10-K(FY2025)にもとづく整理)。

数字で確かめる

  • 2025年の売上高は160.0百万ドルで、前年の154.0百万ドルから6.0百万ドル増えました。製品売上は135.8百万ドル、サービス・その他は24.2百万ドルです(Form 10-K、FY2025)。製品売上はほぼ横ばいで、サービスの伸びが全体の増加を支えたことが読み取れます。
  • 装置の売上は12.0百万ドル(18%)減り、消耗品の売上は11.6百万ドル(16%)増えました。同社は、装置の減少はRevioの販売が97台から61台に減ったこと、また、学術・研究機関が新しい設備投資の資金に不透明感を抱えていることを理由に挙げています(Form 10-K、FY2025)。装置の購入は予算に左右され、消耗品は設置済みの装置の使用に連動することが読み取れます。
  • 売上総利益は45.8百万ドルで、売上高に対する比率は約29%です(45,780÷160,005。数値は同10-Kの表より算出)。前年は37.3百万ドルでした(Form 10-K、FY2025)。粗利は改善しているが、水準はまだ高くないことが読み取れます。
  • 研究開発費は97.3百万ドル(前年134.9百万ドル)、販売費及び一般管理費は141.5百万ドル(前年175.0百万ドル)に減りました(Form 10-K、FY2025)。費用を絞る動きが読み取れます。
  • 純損失は546.4百万ドルで、前年の309.9百万ドルから拡大しました。同年には、取得した無形資産の償却364.5百万ドルと、減損15.0百万ドルが営業費用に含まれています(Form 10-K、FY2025)。損失の拡大に、会計上の大きな費用が含まれていることが読み取れます。

Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか

ここからはOtsumuの考察です。この事業は、装置を設置してから消耗品を継続して売る「装置と消耗品」型に、保守契約の継続収益が重なっていると読めます。2025年のように装置の販売台数が減る局面でも、設置済みのRevioが使われれば、消耗品の売上は増える。装置の売上より消耗品の売上が安定しやすいことを、この年の数字は示しているように見えます。

ただし、装置を設置するまでの意思決定は、顧客の予算に強く左右されます。同社が学術・研究機関の資金への不透明感を理由に挙げている点は、この型の弱点を示しています。設置台数が伸びなければ、将来の消耗品の使用量の土台も広がりません。そのため、1台あたりの使用量を増やす施策(新しい化学、応用キット)が、設置台数の伸びを補う役割を持つと考えられます。

さらに、粗利率が約29%にとどまる点は、装置と消耗品の原価をどう下げるかが課題であることを示唆しています。同社は新しい化学で1サンプルあたりの費用を下げる方針を述べています。これは顧客の利用を増やす一方で、1回あたりの単価も下げうるため、利用量の増加と単価の低下のバランスが問われる設計と解釈できます。

自社事業に持ち帰る問い

  • 自社の製品のうち、導入後に使用が積み上がる部分と、導入時の一度きりの部分は、それぞれ売上の何割でしょうか。
  • 導入数が伸びない時期に備えて、既存顧客の利用量や保守契約を増やす手立てはあるでしょうか。
  • 単価を下げて利用量を増やす施策は、自社の粗利の面で成り立つでしょうか。

小さく試すなら

  1. 既存顧客の導入済みの製品について、導入時期と直近の利用量(購入した消耗品や追加サービス)を並べて、導入後の利用の推移を確認します。
  2. 利用量が多い顧客と少ない顧客を3社ずつ選び、使い方の違いと、利用が進まない理由を聞き取ります。
  3. 利用量を増やすための用途別のセット案(キット・テンプレートなど)を1つ作り、少ない側の顧客に提案して反応を見ます。
  4. 2〜4週間の聞き取りで、反応が得られた案を1社で試し、利用量が増えるか、また単価を下げた場合に粗利が成り立つかを簡単な表で確かめます。

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資料の位置づけ

企業・サービス:Pacific Biosciences of California, Inc.(Revio/Vega などのシーケンシング製品)。参照資料:Form 10-K(2025年12月31日終了年度)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。

参考資料と編集について

上記の公開資料(目論見書・年次報告書・企業の公式発表など)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。

執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.10.25

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