分類:企業事例 › 医療・医薬・ヘルスケア
この事例の要点
- 参天製薬株式会社の2025年度(2026年3月期)の連結売上収益は2,916億円(前期比3%減)でした。内訳は日本が1,468億円(前期比11%減)、中国・アジア・EMEAが1,434億円(同8%成長)で、3地域の売上比率は44%から49%に上がりました(2025年度決算説明会スクリプト、2026年5月12日)。
- 日本の減収は、市場拡大再算定やアレジオンLXのオーソライズド・ジェネリックへの切り替えなどによる薬価下落と、長期収載品の選定療養制度の影響が主な要因と説明されています(2025年度決算説明会スクリプト)。
- 2026年度の予想では、売上収益3,110億円のうち日本1,441億円、海外1,669億円で、海外比率は54%になる見込みです(2025年度決算説明会スクリプト)。
どんな事業か
参天製薬株式会社は、眼科領域の医薬品を日本、中国、アジア、EMEA(欧州・中東・アフリカ)で展開している企業です。決算説明会では、日本では近視進行抑制薬リジュセアや眼瞼下垂薬アップニーク、アレジオン類、ジクアス LXなどの動きが、中国ではクラビットやヒアレインなどの主力製品の動きが説明されています(2025年度決算説明会スクリプト)。
同社は新製品の自社開発に加えて、他社からの導入や販売提携も使っています。資料には、RemeGen社から導入した抗VEGF・FGF二重標的薬(中国で糖尿病黄斑浮腫の申請済み)、韓国での抗VEGF薬の販売提携、AbbVieとの緑内障治療薬の販売提携が挙げられています(2025年度決算説明会スクリプト)。
収益の仕組み
説明会資料から読み取れる構造は、次のとおりです。
- 国内の土台:既存の主力製品。薬価の改定や後発品の浸透、制度変更の影響を受けるため、売上は薬価下落の影響を直接受けます。
- 国内の新規:近視進行抑制薬リジュセアや眼瞼下垂薬アップニークなど新製品の育成。リジュセアは2025年4月に上市しました。
- 海外の拡大:アジア、中国、EMEAでの成長。新薬の展開に加え、導入品や販売提携品を自社の販路に載せています。
- 投資:2026年度の資本配分は、設備投資225億円、研究開発275億円などで、新製品の生産キャパシティ拡充に充てる説明です。
海外の貢献利益のマージンは約40%で横ばいと説明され、その理由は販売提携品など製品構成の変化とされています(2025年度決算説明会スクリプト)。
数字で確かめる
- 売上収益:2,916億円(前期比3%減)、通期予想に対して99.2%。国内の落ち込みを海外の成長が一部補ったことが読み取れます(2025年度決算説明会スクリプト)。
- コア営業利益:551億円(前期比7%減、42億円減)。各地域の貢献利益が40億円減少し、研究開発費が増えたことが要因と説明されており、売上より利益の方が大きく動くことが読み取れます(2025年度決算説明会スクリプト)。
- リジュセア:2025年度の売上11億円(目標は14億円)。採用施設は約3,200軒で、日本の眼科の開業医約8,000軒の一部にとどまり、普及の途中であることが読み取れます(2025年度決算説明会スクリプト)。
- EPS:104円から114円。コア営業利益は減ったものの、無形資産等バランスシート調整がほぼ完了し、IFRSベースでは営業利益・当期利益が増益になったことが読み取れます(2025年度決算説明会スクリプト)。
- 2026年度の予想:売上収益3,110億円、コア営業利益590億円、EPS 124円、年間配当42円。海外は前期比16%(現地通貨ベース12%)の成長を見込み、増収増益基調への回復を計画していることが読み取れます(2025年度決算説明会スクリプト)。
Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか
ここからはOtsumuの考察です。この事業は「ライセンス(知的財産・ブランド)」を軸に、自社開発と導入品を組み合わせる型で読むことができます。医薬品は薬価が定期的に下がるため、同じ製品を売り続けるだけでは国内の売上が縮みます。資料の中で国内の減収要因が薬価と制度に集中していることは、価格が外部で決まる事業では、新製品の育成と販売地域の拡大が売上を維持する主な手段になることを示すと読めます。
導入品や販売提携は、自社の販売網に載せる商品を増やす方法です。自社で一から開発する時間を省ける一方、海外のマージンが製品構成の変化で横ばいになると説明されているように、利益の取り分は自社開発品と異なると考えられます。販売網の稼働率を上げる手段としては有効でも、利益率の見方を分ける必要があります。
もう一つ、リジュセアの売上が目標14億円に対して11億円にとどまった点は、新製品が市場に定着するまでに時間がかかることを示しています。同社が疾患啓発のテレビCMを開始し、採用施設を増やす施策を並べているのは、製品の価値だけでなく、診察の入り口を増やす活動が売上を決めるからだと考えられます。
自社事業に持ち帰る問い
- 自社の主力商品は、価格や制度などの外部要因で下がる可能性がありますか。下がったとき、何で補いますか。
- 他社の商品やサービスを自社の販路に載せる形は、自社の利益構造にどう効きますか。自社商品と分けて採算を見ていますか。
- 新しい商品が定着するまでの間に、顧客が最初に出会う入り口(相談、診断、紹介など)を増やす活動をしていますか。
小さく試すなら
- 主力商品の過去3年の価格・数量の推移を並べ、外部要因で動いた部分と自社の努力で動いた部分を分けて書き出します。
- 自社の販路に載せられそうな他社商品の候補を3つ挙げ、売れた場合の粗利が自社商品と比べてどう違うかを概算します。
- 候補を1つ選び、2〜4週間、既存顧客の数社に紹介して反応と条件を記録します。
- 新商品の入り口になる接点(紹介、相談、デモなど)を1つ決め、接点の数と、そこから購入に進んだ数を週次で記録します。
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資料の位置づけ
企業・サービス:参天製薬株式会社 / 眼科用医薬品。参照資料:2025年度決算説明会スクリプト(2026年5月12日)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。
参考資料と編集について
上記の公開資料(企業の決算短信または年次報告書)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。
執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.10.25