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Sherwin-Williams「塗料の自社製造と自社店舗」に学ぶ垂直統合の事業設計

塗料を自社で製造し、自社運営の専門店で売るSherwin-Williamsの事例です。Form 10-K(FY2025)をもとに、製造と販売の接点を自社で持つ設計から学べることを整理します。

分類:企業事例 › 機械・素材・航空宇宙

この事例の要点

  • Sherwin-Williamsは、塗料・コーティング剤の開発、製造、流通、販売を行っています。Paint Stores Groupの店舗は自社運営で、2025年末で4,853店です(Form 10-K、FY2025)。
  • Paint Stores Groupで売る製品の大半は、Consumer Brands Groupの工場で作られています。同グループの売上の約63%は、主にPaint Stores Groupに向けたグループ内取引です(Form 10-K、FY2025)。
  • 店舗の顧客は、建築・工業用塗料の事業者(プロの塗装業者)と、一般の住宅所有者です(Form 10-K、FY2025)。

どんな事業か

The Sherwin-Williams Companyは1866年創業で、1884年にオハイオ州で設立された企業です。普通株式をニューヨーク証券取引所(NYSE、ティッカー SHW)に上場しています。同社は、塗料、コーティング剤、関連製品の開発・製造・流通・販売を行っていると記載しています(Form 10-K、FY2025)。

報告セグメントは三つです。Paint Stores Groupは米国・カナダ・カリブ海地域で4,853店の自社運営の専門店を持ちます。Consumer Brands Groupは製品の製造・流通を担い、中南米に307店を持ちます。Performance Coatings Groupは317の営業拠点を持ちます(いずれも2025年12月31日時点、Form 10-K、FY2025)。

収益の仕組み

Form 10-K(FY2025)をもとに、構造を整理します。

  • 入り口:塗装業者や住宅所有者が、自社運営の専門店で製品を買います。
  • 製品の流れ:Paint Stores Groupの製品の大半は、Consumer Brands Groupの工場で作られ、グループ内で店舗に流れます。
  • 顧客の幅:Performance Coatingsは、Paint Stores Group、自社の317拠点、直販の営業担当、外部の販売担当を通じて、産業向けなどに販売します。
  • 継続:塗装は同じ事業者が繰り返し購入するため、店舗が日常の購買の窓口になります。この点は、同社の資料の記載ではなくOtsumuの見立てです。
お金を払う人・対価塗装業者・住宅所有者が自社専門店で購入産業向けの顧客が塗料・コーティングを購入自社工場から自社専門店へ流れる塗料
図1 Sherwin-Williamsの収益の流れ(Form 10-K(FY2025)にもとづく整理)。

数字で確かめる

  • FY2025の連結純売上高は23,574.3百万ドルで、前年の23,098.5百万ドルから2.1%増えました(Form 10-K、FY2025)。
  • Paint Stores Groupの純売上高は13,605.9百万ドル(前年13,188.0百万ドル)で、連結の約58%を占めます(資料の数値から計算)。販売の中心が自社店舗にあることが読み取れます。
  • Paint Stores Groupは2025年に83店を新規出店し、3店を閉店しました(純増80店)。開店から12か月超の店舗の純売上高は1.7%増でした(Form 10-K、FY2025)。出店を続けながら、既存店も伸びていることが読み取れます。
  • セグメントの税引前利益は、Paint Stores Groupが3,061.5百万ドル(前年2,902.6百万ドル)、Consumer Brands Groupが509.6百万ドル(前年589.9百万ドル)でした(Form 10-K、FY2025)。販売側の利益が増え、製造側が減った年であることが読み取れます。
  • 当期純利益は2.569十億ドル、希薄化後1株当たり純利益は10.26ドル(前年10.55ドル)でした(Form 10-K、FY2025)。

Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか

ここからはOtsumuの考察です。この事業は、製造から販売までを自社でつなぐ垂直統合と、カテゴリーに特化した専門店の型が重なっていると読めます。塗料は、色や用途、下地との相性で選び方が変わる商品です。専門店に人がいて、相談しながら選べるなら、プロの事業者にとっては仕事の効率に直結します。自社運営の店舗は、その相談の窓口であり、需要の情報が入る場所でもあると考えられます。

製品の大半を自社の工場から店舗に流す仕組みは、販売の接点を他社に預けない設計です。他社の小売店頭に並べる場合は、棚の位置や価格を相手が決めます。自社の店舗なら、品ぞろえや在庫、顧客への対応を自社で決められます。

トレードオフは、店舗網の維持に固定的な費用と人員がかかることです。Consumer Brands Groupの利益が前年より減っている点は、製造側の費用や需要の変動を、店舗網と合わせて抱える難しさを示していると読めます。

自社事業に持ち帰る問い

  • 自社の商品やサービスは、どの接点を他社に預けていて、そこで失っているものは何でしょうか。
  • 顧客が専門家に相談しながら選ぶ場面は、自社のどこにあるでしょうか。
  • 接点を自社で持つ費用と、得られる情報や信頼の釣り合いは取れているでしょうか。

小さく試すなら

  1. 自社の顧客の購入から利用までの流れを書き出し、自社が直接関わる接点と、他社に任せている接点を色分けします。
  2. 他社に任せている接点のうち、顧客の不満や取りこぼしが多そうな一つを選び、その理由を顧客数人に聞きます。
  3. その接点を自社で持つ場合の小さな試し方(相談窓口、試用の場、直販ページなど)を一つ決めます。
  4. 2〜4週間で、相談件数、購入率、顧客から得られた情報の量を記録し、続ける価値があるかを判断します。

関連するビジネスモデル

資料の位置づけ

企業・サービス:The Sherwin-Williams Company / 塗料・コーティング剤の製造と自社運営の専門店。参照資料:Form 10-K(FY2025、2025年12月期)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。

参考資料と編集について

上記の公開資料(企業の決算短信または年次報告書)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。

執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.10.25

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