この事例の要点
- Southwest Airlines Co.は2025年に、最安の「Basic」運賃と、Choice、Choice Preferred、Choice Extraの運賃を導入し、2025年5月28日以降の発券分から多くの運賃で手荷物を有料にしました(Form 10-K、2025年12月期)。
- 2026年1月27日からは、従来の自由席を改めて、標準席・優先席・足元の広い席から選ぶ座席指定制に移行しました。搭乗順も、座席の位置、運賃の種類、会員の状態で決める方式に変えました(Form 10-K、2025年12月期)。
- 2025年の旅客収益のうち、運賃とは別に課金される付帯収益は1,835百万ドルで、前年の1,029百万ドルから約78%増えました(1,835−1,029=806百万ドル、806÷1,029)。商品の組み替えが数字に現れ始めています(Form 10-K、2025年12月期)。
どんな事業か
Southwest Airlines Co.は米国に本社を置く航空会社で、米国の証券取引所に上場しています。自由席、手荷物の無料、変更手数料なしといった方針を長く掲げてきました。10-Kは、同社が「歴史的に自由席のモデルを使ってきた」と説明しています(Form 10-K、2025年12月期)。
同社は2024年と2025年に、座席指定、足元の広い席、国際提携航空会社との連携、休暇商品「Getaways by Southwest」、深夜便による機材稼働の向上などの取り組みを発表し、実施に入っています。10-Kはこれを、収益を増やし費用の上昇を補うための戦略的な取り組みと位置づけ、他の大手が持つ「Basic Economy」「プレミアムエコノミー」などの商品区分に対応するためと説明しています(Form 10-K、2025年12月期)。
収益の仕組み
運賃は、4つの区分で顧客に選択肢を示す形になりました。
- 入り口:最安の「Basic」。変更・払い戻しが制限され、手荷物は有料です。
- 上位への誘導:Choice、Choice Preferred、Choice Extraは、返金可否、獲得ポイント、搭乗順、手荷物などの条件が段階的に良くなります。Choice Extraは2個の手荷物が無料です。
- 付帯収益:手荷物料金、座席の選択(標準・優先・足元の広い席)、優先搭乗(Priority Boarding)など、運賃とは別に課金できる項目を設けました。
- 会員・カード:Rapid Rewardsの上級会員や提携カード会員には、手荷物の無料枠を設けています。ChaseとのCo-brand契約の改定も2025年にあり、一部の提携カード特典が旅客収益側へ分類されるようになりました(Form 10-K、2025年12月期)。
数字で確かめる
- 2025年の営業収益は28,063百万ドル(前年比2.1%増)、旅客収益は25,535百万ドル(同2.2%増)で、同社は通年の旅客収益の増加として説明しています。増収の主因は手荷物料金の収入と、Chase契約の改定による分類の変更です(Form 10-K、2025年12月期)。
- 運賃とは別に課金される付帯収益は、2023年の925百万ドルから2024年の1,029百万ドル、2025年の1,835百万ドルへと増えました。有料化の方針が、数字に現れていることが読み取れます(Form 10-K、2025年12月期)。
- 旅客収益のうち、特典航空券分(Passenger loyalty)は2025年に3,259百万ドルで、前年の3,484百万ドルから減りました。ポイントの使われ方が変わる局面にあることが読み取れます(Form 10-K、2025年12月期)。
- 営業利益は428百万ドルで前年の321百万ドルから33.3%増、特別項目を除くと539百万ドルです。収益は伸びたものの、営業利益率は約1.5%(428÷28,063)と薄く、組み替えの成果はこれからの検証段階にあることが読み取れます(Form 10-K、2025年12月期)。
- 10-Kのリスク要因は、顧客が方針の変更を受け入れない場合に、事業や業績に悪影響がありうると明記しています。大きな方針転換が顧客の反応に左右されることが読み取れます(Form 10-K、2025年12月期)。
Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか
ここからはOtsumuの考察です。この事例は、1つの価格にすべてを含める設計から、基本の価格と選べる追加項目に分ける設計への転換と読めます。すべてを含む価格は分かりやすく、同社の差別化でもありました。一方で、手荷物や座席の位置に価値を感じる顧客と、感じない顧客が同じ価格を払うことになります。項目を分けると、価値を感じる顧客に追加で払ってもらい、感じない顧客には低い価格を示せます。顧客ごとの支払いの意思に合わせて収益を取り出す考え方だと考えられます。
この転換では、会員とカードの設計が補強の役割を持ちます。上級会員やカード会員には手荷物の無料枠を残しており、価値の高い顧客を有料化の影響から守りつつ、上位の運賃や会員への移行を促す設計に見えます。他方で、10-Kが述べるとおり、それまでの「低運賃・無料の手荷物」という立ち位置が、顧客の同意を得られるかが最も重要な論点になります。
営業利益率が薄い状況での転換であるため、価格を分ける効果と、顧客が離れる影響は、数字で追い続ける必要があります。
自社事業に持ち帰る問い
- 自社の価格に、一部の顧客しか使わない項目が含まれていて、他の顧客が間接的に負担していないでしょうか。
- 基本価格と選べる追加項目に分けるとき、既存の優良顧客を守る例外をどう設計しますか。
- 方針の変更に対する顧客の反応を、いつ、どの指標で確認しますか。
小さく試すなら
- 自社の価格に含まれる項目を一覧にし、利用率の低い項目と、費用のかかる項目に印をつけます。
- 印をつけた項目の1つを任意の追加項目として切り出し、既存顧客の一部だけに2〜4週間案内します。
- 切り出した項目の選択率、基本価格の申込数、問い合わせ件数を記録します。
- 優良顧客には無料枠を残す例外を設け、離脱の有無と満足度の声を確認してから対象を広げます。
関連するビジネスモデル
資料の位置づけ
企業・サービス:Southwest Airlines Co. / 運賃区分、座席指定、Rapid Rewards。参照資料:Form 10-K(2025年12月期)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。
参考資料と編集について
上記の公開資料(目論見書・年次報告書・企業の公式発表など)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。
執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.10.25