分類:企業事例 › 機械・素材・航空宇宙
この事例の要点
- Stratasys Ltd.は、産業用などの3Dプリンター、その材料(消耗品)、ソフトウェア、保守等のサービス、3Dプリント部品の受託製造を提供しています(Form 20-F、2025年12月期)。
- 2025年12月期の売上高は551,102千ドルで、うちサービスが170,833千ドルです。サービスの比率は約31%です(Form 20-F、2025年12月期)。
- 同社は、大きく広がった設置台数が、消耗品とサービスから継続収入を得る機会になると説明しています。一方で、システム販売が減ると、その後のサービス売上も減ることが数字に表れています(Form 20-F、2025年12月期)。
どんな事業か
Stratasys Ltd.はイスラエル法人で、米国ミネソタ州とイスラエルのRehovotに拠点を置き、Nasdaq Global Select Marketに上場しています(Form 20-F)。顧客は自動車、航空宇宙、歯科技工所、民生品、教育機関、防衛、医療、電子機器、重機など幅広い業界にいると記載しています(Form 20-F、2025年12月期)。
同社は、世界に140を超える販売・サポートのパートナーを持つこと、設計者や機械の操作者が3Dプリンターを管理するためのソフトウェアGrabCADを提供していること、自社の受託製造部門Stratasys Directで3Dプリント部品の製造サービスも行っていることを説明しています。受託製造部門を持つことで、プリンターの販売と、実際の製造の知見が互いに生かされると同社は述べています(Form 20-F、2025年12月期)。
収益の仕組み
収益は大きくプリンター本体を含む製品と、サービスに分かれます。サービスには、保守契約と導入時のウォランティ、受託製造の有償部品サービス、その他の専門サービスが含まれます(Form 20-F)。構造を整理すると次のようになります。
- 入り口:3Dプリンターの販売。直販と、販売パートナー経由の両方がある。
- 課金:本体の販売代金に加え、材料などの消耗品を使うたびに購入される。
- 継続:保守契約などのサービス。設置台数が増えるほど、継続収入の基盤が大きくなる。
- 広がり:ソフトウェアと、部品の受託製造を通じて、顧客の3Dプリントの活用を広げる。
数字で確かめる
- 2025年12月期の売上高は551,102千ドルで、前期の572,458千ドル、2023年の627,598千ドルから2年連続で減りました。製品は380,269千ドル、サービスは170,833千ドルでした(Form 20-F、2025年12月期)。2年間で売上が約12%(計算値)縮んでいることが読み取れます。
- サービス売上は2025年に170,833千ドル、2024年に180,541千ドル、2023年に193,857千ドルと減っています。同社は、2025年のサービス売上の減少は、直近の期間にシステム売上が減ったことが主な要因だと説明しています(Form 20-F、2025年12月期)。継続収入が設置台数に連動しており、新しい販売が減ると遅れて影響することが読み取れます。
- 売上総利益は227,286千ドルで、売上高に対する比率は約41.2%でした。前期は256,816千ドルです(Form 20-F、2025年12月期)。売上の縮小が粗利の額を押し下げたことが読み取れます。
- 営業損失は72,489千ドルで、前期の85,661千ドルより縮小しました。研究開発費は77,304千ドルと、前期の99,142千ドルから減っています(Form 20-F、2025年12月期)。費用の圧縮で損失幅を狭めていることが読み取れます。
- サービス売上のうち121,004千ドルは時間をかけて計上される収益で、49,829千ドルは一時点で計上されるものです(Form 20-F、2025年12月期)。サービスの多くが期間にわたる契約であることが読み取れます。
Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか
ここからはOtsumuの考察です。この事業は、ハードウェアを売ったあとに消耗品とサービスで収益を重ねる設計で、レイザー&ブレード型とハードウェア+サービス型の組み合わせと読めます。本体を売って終わりにせず、使われるほど売上が生まれる層を持つことで、需要の波を和らげる効果が期待できます。
ただし、この設計は「新しい設置台数が増え続けること」に支えられています。数字を見ると、システム売上の減少から時間をおいてサービス売上が減っており、継続収入の層は新規販売の減速を完全には吸収できていません。継続収入は、いったん積み上がると安定して見えますが、元になる設置台数が増えなければ縮みます。この遅れを織り込んだ見通しが必要だとOtsumuは見ます。
もう一つの論点は、受託製造部門の位置づけです。自社の機械を使って部品を作る部門を持つことは、機械の使いどころを顧客に示す役割も果たすと考えられます。機械を売る会社が使い方の実例を持つことは、販売の説得力にもつながり得ます。
自社事業に持ち帰る問い
- 自社の製品を売ったあと、継続して購入される消耗品や、継続して契約されるサービスはどれでしょうか。
- 継続収入は、新規の販売が減ったとき、どれくらいの遅れで影響を受けるでしょうか。
- 自社の製品を使った実例や受託の仕事を、自ら持つことで、販売や改善にどう生かせるでしょうか。
小さく試すなら
- 過去3年の売上を、新規販売、消耗品、保守・サービスに分けて、年ごとの推移を一つの表にまとめます。
- 既存顧客の保守契約や消耗品の購入が、購入後何か月目から始まり、何年続いているかを数件の顧客で確認します。
- 新規販売が減ったと仮定して、継続収入が何か月遅れで減るかを、簡単な試算で確かめます。試算は仮のものと明記します。
- 2〜4週間のうちに、継続収入の比率が低い顧客層に対して、保守や消耗品のセット提案を一件だけ試し、反応を記録します。
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資料の位置づけ
企業・サービス:Stratasys Ltd./3Dプリンター、消耗品、サービス。参照資料:Form 20-F(2025年12月期)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。
参考資料と編集について
上記の公開資料(目論見書・年次報告書・企業の公式発表など)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。
執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.10.25