この事例の要点
- TSMCは、顧客から提供された回路設計にもとづいてシリコンウエハーを製造する専業ファウンドリです(Form 20-F、2025年12月期)。
- 2025年の売上高は3兆8,091億台湾ドルで前年比31.6%増。7ナノ以下の先端工程がウエハー売上の74%を占め、平均販売単価の上昇が増収の主因と説明されています(Form 20-F、2025年12月期)。
- 設備投資は2025年に1兆2,724億台湾ドル、2026年は520億〜560億米ドルを見込んでいます。製造能力そのものが事業の中心にある設計です(Form 20-F、2025年12月期)。
どんな事業か
Taiwan Semiconductor Manufacturing Company Limitedは、台湾(新竹科学園区)に本社を置き、台湾証券取引所とNYSE(ADS)に上場しています。1987年に台湾政府と民間投資家の合弁として設立されました。顧客が設計した回路をもとにシリコンウエハー上に半導体を製造する、専業ファウンドリとして製造能力を築いてきたと説明しています(Form 20-F、2025年12月期)。
製品は、ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)、スマートフォン、IoT、車載、デジタル家電などの用途に使われます。2025年に2ナノメートル技術が量産に入り、16オングストローム技術の開発も進んでいます。年間出荷は12インチ換算で約1,500万枚でした(Form 20-F、2025年12月期)。
収益の仕組み
同社の収益は、顧客の半導体を製造して得る売上です。製造する製品は顧客の設計であり、自社で製品を企画して売る事業ではありません。価格は特定の期間ごとに顧客と設定し、市況などに応じて期中に調整されることもあると説明しています(Form 20-F、2025年12月期)。
- 入り口:設計会社やシステム企業が、先端の論理工程と、高速接続などの知的財産を使って製品を作る。
- 課金:製造したウエハーの対価が売上。先端工程の比率が上がると販売単価が上がる。
- 継続:得た利益と営業キャッシュフロー、社債で設備投資と研究開発を続け、次の工程を顧客に提供する。
数字で確かめる
- 2025年の売上高は3兆8,091億台湾ドル(121,423百万米ドル)、売上総利益率は59.9%、営業利益率は50.8%でした(Form 20-F、2025年12月期)。製造受託でも、先端工程の比率が高いと高い利益率が出ることが読み取れます。
- プラットフォーム別では、HPCが売上の58%(前年51%)、スマートフォンが29%(同35%)でした(Form 20-F、2025年12月期)。用途の中心がスマートフォンからHPCへ移っていることが読み取れます。
- 上位10顧客が2025年の売上の約78%(2024年は76%)、売上第1位の顧客が19%(同22%)、第2位が17%(同12%)でした(Form 20-F、2025年12月期)。少数の大口顧客に依存する構造であることが読み取れます。
- 設備投資は2025年に1兆2,724億台湾ドルで、同年の売上高の約33%にあたります(Form 20-F、2025年12月期の数値から算出)。売上の三分の一が、次の製造能力に再投資されていることが読み取れます。
- 為替では、米ドルが対台湾ドルで1%下落すると、営業利益率が約0.3ポイント下がると記載しています(Form 20-F、2025年12月期)。売上の大半が米ドル建てであり、為替の影響を受けやすいことが読み取れます。
Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか
ここからはOtsumuの考察です。この事業は、顧客と競合しない製造の専業にすることで、設計会社が安心して設計情報を預けられる位置に立つ設計だと読めます。製品を持たないぶん、顧客数と用途が広がるほど、製造への需要が積み上がります。
一方で、先端工程は投資の規模そのものが参入の壁になります。売上の三分の一を設備に回す構造は、投資を続けられる収益が前提で、収益を生むのは先端工程の売上だという循環になります。この循環が回っている間は強みとなり、需要が落ちたときには固定費の重さが課題になると考えられます。
もう一つの論点は、集中です。上位10顧客で約8割という構成は、関係の深さの表れであると同時に、依存のリスクでもあります。自社が「受託」で稼ぐ場合に、任せてもらう理由を技術と信頼のどちらに置くかを、はっきりさせる必要があると読み取れます。
自社事業に持ち帰る問い
- 自社が顧客と競合しないことで得られる信頼は、どの業務で価値になっているでしょうか。
- 売上の何割を次の能力づくりに再投資しており、その投資を続けられる収益はどの商品から出ているでしょうか。
- 上位の顧客への依存度を、いま数字で把握できているでしょうか。
小さく試すなら
- 直近1年の売上を顧客別に並べ、上位5社の比率と、前年からの変化を表にします。
- 上位顧客それぞれについて、自社を選んでいる理由(品質、納期、技術、価格)を、営業担当と現場に聞いて書き出します。
- 売上のうち利益率が高い仕事と低い仕事を分け、再投資する先を一つに絞った案を作ります。
- 2〜4週間のうちに、その案を上位顧客1〜2社に見せ、今後の発注計画に変化が出るかを確認します。
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資料の位置づけ
企業・サービス:Taiwan Semiconductor Manufacturing Company Limited(TSMC)/専業ファウンドリ。参照資料:Form 20-F(2025年12月期)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。
参考資料と編集について
上記の公開資料(目論見書・年次報告書・企業の公式発表など)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。
執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.10.25