リフト&シフトとは
リフト&シフトとは、自社サーバーなどで動いている既存システムを、まずはほとんど手を加えずにクラウドへ移し(リフト)、その後にクラウドの機能を活かす形へ段階的に作り変えていく(シフト)移行の進め方です。
イメージとしては、引っ越しのときに「まず荷物を新居にそのまま運び込み、住みながら少しずつ家具の配置や収納を見直す」ようなものです。最初から理想の形に作り直そうとすると時間も費用もかかるため、移行のリスクを分割して進めるための考え方です。英語では Lift and Shift と書き、前半の「そのまま移す」部分だけを指して「リホスト」と呼ぶこともあります。
仕組み・ポイント
クラウド移行の方法は、どこまで作り変えるかによっていくつかに分類されます。
| 方法 | 内容 | 手間 | クラウドの利点の活かし方 |
|---|---|---|---|
| リホスト(リフト) | サーバーをほぼそのまま仮想サーバーへ移す | 小さい | 限定的(ハードウェア管理から解放される) |
| リプラットフォーム | DBをマネージドサービスにするなど一部を置き換え | 中程度 | 運用負荷の軽減 |
| リファクタリング・再設計(シフト) | サーバーレスやコンテナなどクラウド向けに作り変え | 大きい | 自動拡張、費用最適化、可用性の向上 |
| リプレイス | SaaSなど別の仕組みに置き換え | 業務見直しを含む | 運用そのものを外部化 |
リフト&シフトは、このうち「リホストで移し、その後リプラットフォームや再設計へ進む」という二段階の進め方を指します。
リフト段階で得られる主な効果は次のとおりです。
- サーバー機器の老朽化や保守期限への対応
- データセンターや機器の管理から手が離れる
- バックアップや監視などクラウドの基本機能を使える
一方、アプリケーションの構造はそのままなので、利用量に応じた自動拡張や、使った分だけの課金といったクラウドの利点はまだ十分に活かせません。それを実現するのがシフトの段階です。
実務での使い方・具体例
架空の例として、社内のサーバールームで業務システムを動かしている会社が、サーバー機器の保守期限を迎えたケースを考えます。機器を買い替えるか、クラウドに移るかを検討し、期限までの時間が限られていたため、リフト&シフトを選びました。
- リフト:現在のサーバー構成を調べ、クラウド上に同等の仮想サーバーを用意し、OS・ミドルウェア・アプリをほぼそのまま移す。期限内の移行を最優先にする。
- 安定稼働の確認:移行後しばらくは、性能・費用・障害の有無を観察する。
- シフトの計画:費用が大きい部分、運用負荷が高い部分から、マネージドサービスへの置き換えや構成の見直しを順に進める。
- 継続的な見直し:利用状況に合わせてサーバーの大きさや稼働時間を調整する。
このように段階を分けることで、「期限までに必ず移す」ことと「クラウドに適した形にする」ことを切り離せます。
ただし、注意したいのはシフトが後回しになり続けるケースです。移行が終わると目の前の課題が消えるため、最適化の予算や担当が確保されず、結果として「クラウド上でオンプレミスと同じ構成を常時稼働させ、費用だけが上がった」という状態になりがちです。リフトの計画を立てる時点で、シフトの対象と時期の目安まで決めておくことが重要です。
シフトの優先順位を決めるときは、次のような観点で候補を並べると判断しやすくなります。
- 毎月の費用に占める割合が大きいサーバーやサービス
- バックアップやパッチ適用など、手作業の運用が多い部分
- 利用量の波が大きく、自動拡張の効果が出やすい部分
- 障害時の影響が大きく、冗長化が必要な部分
効果が大きく、作り変えの範囲が小さいものから手を付けると、シフトの成果を早く示せ、次の予算も確保しやすくなります。
よくある誤解と注意点
- 「クラウドに移せば安くなる」とは限らない:常時稼働の大きなサーバーをそのまま移すと、費用が下がらないこともあります。費用はシフト段階で最適化するものと考えます。
- ライセンスの確認:商用ソフトウェアのライセンスは、クラウド環境で使う場合の条件が異なることがあります。提供元に最新情報を確認してください。
- ネットワークと連携先:社内の他システムや取引先との接続が、移行後も同じように動くかを事前に確認します。
- 移せないものもある:古いOSや特殊な機器に依存した処理は、そのままでは移せない場合があります。
関連用語
- マイグレーション:システムやデータを新しい環境へ移すこと。
- AWS:代表的なクラウドサービスの一つ。
- サーバーレス:サーバー管理なしで処理を動かす方式。
- コンテナ:アプリを環境ごとまとめて動かす技術。
- オートスケーリング:負荷に応じてサーバー台数を自動調整する仕組み。
- 実践記事:クラウド移行の手順、クラウド費用の最適化
Otsumuに相談できること
サーバーが数台で構成も単純であれば、クラウド事業者の移行ツールや手順書を使って社内で移行できることもあります。期限までに確実に移したい、移した後の費用が想定より膨らんでいる、どこからシフトすべきか判断したい、といった場合は、構成の調査と段階的な計画づくりから外部と組むと進めやすくなります。Otsumuではクラウド移行として、リフトの計画からシフト段階の最適化まで支援します。30分の無料相談でご相談ください。
執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.10.01