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株式会社エービーシー・マート「靴の専門店チェーン」に学ぶ複合業態の事業設計

ABC-MART、GRAND STAGE、ABC-MART SPORTSなど複数の店舗業態を重ねて売上高3,786億円、営業利益率16.7%を上げる構造を、2026年2月期の決算短信から確かめます。

分類:企業事例 › 小売・EC

この事例の要点

  • 株式会社エービーシー・マートは、国内外で1,505店舗を展開する靴の専門店チェーンで、グランドステージと複合業態店舗の拡大、デジタルインフラの活用、ライフスタイルカジュアルの拡充に対応しています(2026年2月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。
  • 2026年2月期の売上高は3,786億24百万円(前期比1.7%増)、営業利益は632億87百万円(同1.2%増)、連結営業利益率は16.7%です(2026年2月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。
  • 国内の「GRAND STAGE」は127店舗、「ABC-MART SPORTS」は131店舗に増え、2バナー以上の複合業態店舗は142店舗となりました(2026年2月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。

どんな事業か

株式会社エービーシー・マート(東証、コード2670)は、シューズを中心に販売する専門店チェーンです。決算短信では、国内と海外の2つのセグメントを示しています。2026年2月期は、国内外あわせて64店舗の新規出店と65店舗の改装を行い、店舗数は1,505店舗となりました。国内は期末で1,107店舗、海外は韓国320店舗、台湾64店舗、米国7店舗、ベトナム5店舗、フィリピン2店舗の計398店舗です(2026年2月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。

国内では、スポーツ系カジュアルの新作スニーカーやハンズフリーシューズの需要拡大を背景に、ナショナルブランドのスニーカーやアパレルの販売を強化しました。海外では、2025年10月に東南アジア2か国目のフィリピンに進出しています(2026年2月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。

収益の仕組み

収益は、店舗とオンラインでの靴・アパレルの販売です。決算短信の記述から、次の構造が読み取れます。

  • 入り口:郊外のショッピングセンターを中心とした出店に加え、都心部では情報の発信拠点となる「GRAND STAGE」を出す方針です。次期の見通しでは「リアル店舗のメディア化」と表現しています。
  • 商品:ナショナルブランドに加え、自社ブランドのハンズフリーシューズや「ダナー」などを展開します。インバウンド向けには日本限定モデルやABC-MART限定商品を展開するとしています。
  • 拡張:シューズ以外の商品、特にスポーツアパレルの売上を拡大するため、「GRAND STAGE」と「ABC-MART SPORTS」の出店を強化しています。
  • デジタル:実店舗におけるEC在庫の販売分を含めたデジタル売上高は前期比7.4%増で、デジタル売上高構成比は10.6%です。
お金を払う人・対価来店客:店舗での靴・アパレル販売オンライン販売靴の専門店チェーンかかる費用出店(店舗網の拡大)商品の仕入
図1 ABC-MARTの収益の流れ(決算短信にもとづく整理)。

数字で確かめる

  • 国内の売上高は2,731億64百万円(前期比5.4%増)、セグメント利益は564億41百万円(同6.3%増)。海外の売上高は1,113億78百万円(同4.5%減)、セグメント利益は70億31百万円(同25.8%減)(2026年2月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。国内が全体を支え、海外は韓国と米国の影響で減っていることが読み取れます。
  • 国内店舗(「OSHMAN'S」を除く)の全店の売上高は前期比5.1%増、既存店は前期比4.6%増。客単価は3%以上上昇しています(2026年2月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。店舗数の増加だけでなく、既存店の売上が伸びていることが読み取れます。
  • 品目別の売上高は、スポーツが213,855百万円(前期比2.4%増)、キッズが31,045百万円(同11.1%増)、ウェアその他が28,771百万円(同17.9%増)。一方、レザーカジュアルは52,022百万円(同3.3%減)(2026年2月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。シューズ以外の商品の伸びが大きいことが読み取れます。
  • 免税売上は金額ベースで前期比1割以上の増加(2026年2月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。インバウンド需要が売上に寄与していることが読み取れます。
  • 純資産は4,010億円、現金及び現金同等物の残高は2,071億74百万円、棚卸資産の増加額は141億77百万円(2026年2月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。厚い資金を持つ一方で、在庫への投資が営業キャッシュ・フローを押し下げる要因になっていることが読み取れます。

Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか

ここからはOtsumuの考察です。この事業は「専門店(カテゴリー特化)」の型を、複数の店名(バナー)で重ねたものと読むことができます。靴という一つのカテゴリーで品揃えを深くしたうえで、スポーツ、アパレル、ライフスタイルなど、顧客の目的に合わせた店名を使い分けています。決算短信が2バナー以上の複合業態店舗を142店舗と示し、増床や業態変更を進めているのは、同じ商圏の顧客に、靴以外の商品を含めて買ってもらう導線を増やすためだと考えられます。

もう一つは、実店舗とデジタルの役割分担です。デジタル売上高に実店舗におけるEC在庫の販売分を含めて集計し、構成比が10.6%であると示している点は、店舗とECを分けずに在庫と販売を扱う姿勢を表していると読めます。一方、海外はセグメント利益が減っており、国ごとの需要や政策の影響を受けやすいこともうかがえます。出店を続けつつ、立地や業態を入れ替える運営が前提になっていると考えられます。

自社事業に持ち帰る問い

  • 自社の主力商品を軸に、同じ顧客が目的に応じて別の商品も買う導線は、どれだけ用意できているでしょうか。
  • 自社の店舗やサイトの名前・見せ方を、顧客の目的別に分けることで、伝わりやすくなる商品群はありますか。
  • 実店舗とオンラインで在庫や販売の数字を分けて見ていないでしょうか。一体で見ると何が分かりますか。

小さく試すなら

  1. 直近1年の購入履歴から、主力商品と一緒に買われている商品の組み合わせを上位から書き出します。
  2. その組み合わせの中から1つを選び、売り場またはサイト上で近くに並べるか、まとめて紹介するページを作ります。
  3. 2〜4週間、並べた場合と並べない場合で、同時購入の件数と客単価を記録して比べます。
  4. 効果が見えれば、次の組み合わせに広げます。見えなければ、並べ方か組み合わせを替えて再び試します。

関連するビジネスモデル

資料の位置づけ

企業・サービス:株式会社エービーシー・マート / 靴の専門店チェーン。参照資料:2026年2月期 決算短信。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。

参考資料と編集について

上記の公開資料(企業の決算短信または年次報告書)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。

執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.10.25

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