この事例の要点
- 株式会社長谷工コーポレーションは、建設関連事業、不動産関連事業、管理運営事業、海外事業の4つの報告セグメントで事業を展開しています(2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。
- 2026年3月期の連結売上高は1兆2,731億円(前期比8.1%増)、営業利益は987億円(同16.6%増)です。短信は、完成工事総利益率の改善による増益と説明しています(2026年3月期 決算短信)。
- 建築工事の受注にとどまらず、竣工後のマンション管理戸数448,076戸、賃貸マンションなどの運営管理戸数196,878戸を開示しており、建てた後に続く仕事の規模が読み取れます(2026年3月期 決算短信)。
どんな事業か
株式会社長谷工コーポレーションは東京証券取引所に上場する企業で、2026年3月期の連結売上高は1兆2,731億円です。2025年度は中期経営計画「HASEKO Evolution Plan」の初年度で、連結経常利益は予想の900億円を上回る941億円になったと短信は説明しています(2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。
建設関連事業では、事業主から評価を受けている点として、土地情報の収集力、商品企画力、施工品質や工期遵守に対する姿勢、効率的な生産体制を挙げています。報告セグメントは、建設関連事業、不動産関連事業、管理運営事業、海外事業(ハワイ州オアフ島での商業施設の運営と戸建分譲の開発)です。短信は、第1四半期から報告セグメントの区分を変更したと記しています(2026年3月期 決算短信)。
収益の仕組み
短信の記載から、事業の入り口から継続までの構造を次のように整理できます。
- 入り口(建設関連事業):分譲マンション新築工事の受注(2025年度は合計64件)と、竣工した完成工事(賃貸マンション等12件を含む計104件)です。セグメントの売上高は9,009億円、営業利益は685億円でした。
- つなぐ(不動産関連事業):分譲マンションの新規引渡し、収益不動産の売却、不動産仲介の取扱件数の増加で、売上高2,932億円、営業利益356億円でした。
- 継続(管理運営事業):賃貸マンションの運営管理・社宅管理代行、分譲マンション管理、シニアサービスで、売上高1,654億円、営業利益82億円でした。
- 海外事業:売上高43億円、営業損失61億円で、現時点では先行投資の段階にあると読めます。
以上は2026年3月期 決算短信の記載です。
数字で確かめる
- 連結売上高1兆2,731億円(前期比8.1%増)、営業利益987億円(同16.6%増)、経常利益941億円(同12.8%増)(2026年3月期 決算短信)。完成工事総利益率の改善が増益につながったことが読み取れます。
- 単体の受注高7,267億円(前期比23.9%増。前期は5,866億円)(2026年3月期 決算短信)。工事の入り口が大きく伸びていることが読み取れます。
- 管理運営事業:運営管理戸数196,878戸(前期末比1.4%増)、分譲マンション管理戸数448,076戸(同1.1%増)、シニアサービス稼働数2,786戸(同2.5%増)(2026年3月期 決算短信)。管理戸数が小さな率で着実に増え、継続的な仕事の土台になっていることが読み取れます。
- 管理運営事業の営業利益82億円(同26.6%増)に対し、建設関連事業の営業利益は685億円(同21.6%増)(2026年3月期 決算短信)。利益額では建設関連事業が大きく、管理運営事業は利益の規模は小さいが伸び率が高いことが読み取れます。
- 営業活動によるキャッシュ・フロー1,574億円の収入超過(前期は39億円)。短信は主因を棚卸資産の減少に伴う資金増加542億円と説明しています(2026年3月期 決算短信)。在庫を持つ事業では、キャッシュ・フローが在庫の増減で大きく動くことが読み取れます。
Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか
ここからはOtsumuの考察です。この事例は、請負の工事を入り口に、完成後の管理・運営まで同じグループで引き受ける設計として読めます。短信が受注で評価されている点として土地情報の収集力や商品企画力を挙げているのは、工事の受注が「建てる技術」だけでなく「建てる案件を見つける力」に支えられていることを示唆していると考えられます。受注の質が上がれば完成工事総利益率が改善し、利益に直結する構造です。
管理運営事業の管理戸数は、一度つくると毎年少しずつ積み上がり、短期の景気に左右されにくい土台です。一方で、短信がマンション市場について首都圏の新規供給戸数が4年連続で前年度を下回ったと述べているように、工事の入り口は市況の影響を受けます。入り口の波を、管理という継続の仕事が受け止める関係にあると読めます。ここでの仮説は、請負型の事業が継続収益を持つには、完成後に顧客との接点が残る仕事を最初から設計に入れておくことが効く、というものです。
自社事業に持ち帰る問い
- 自社の案件の完成・納品後に、顧客との接点は何が残っていますか。
- 受注の質を決める、案件の「入り口の情報」を、自社は何で集めていますか。
- 一度の売上が大きい事業で、利益の揺れを受け止める継続収益はどこにありますか。
小さく試すなら
- 過去の納品案件を一覧にし、納品後1年以内に追加の依頼や相談があった案件を数えます。
- 追加の依頼が多かった案件の共通点(業種、規模、担当者)を書き出し、仮説を3つにまとめます。
- 直近の納品予定の案件で、納品時に「運用・点検の継続メニュー」を1枚で提案し、反応を2〜4週間記録します。
- 反応があった内容だけを標準メニューにして、次の案件の見積りに最初から入れます。
関連するビジネスモデル
資料の位置づけ
企業・サービス:株式会社長谷工コーポレーション / 建設関連・不動産関連・管理運営。参照資料:2026年3月期 決算短信。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。
参考資料と編集について
上記の公開資料(企業の決算短信または年次報告書)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。
執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.10.25