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Kroger「小売データと広告の副業利益」に学ぶ食品スーパーの事業設計

米国の食品スーパーKrogerが、店舗の来店データと購買データを広告などの「代替利益事業」に転換し、小売に再投資する循環をどう描いているかを、Form 10-K(2025年度)の記載から読み解きます。

分類:企業事例 › 小売・EC

この事例の要点

  • Krogerは35州とワシントンD.C.で2,697店のスーパーマーケットを運営する米国の食品小売企業で、2025年度の総売上は147,642百万ドルでした(Form 10-K、2025年度)。
  • 同社は、小売で生まれる来店と購買のデータを使い、「営業利益率の高い代替利益事業(第三者向けメディア収入など)」を伸ばし、その価値を小売に再投資する循環を戦略の中心に置いています(Form 10-K、2025年度)。
  • Our Brands(自社ブランド)の売上は2025年度に390億ドルを超え、価格と品質の両面で顧客の信頼をつくる土台になっています(Form 10-K、2025年度)。

どんな事業か

The Kroger Co.は米国オハイオ州に本社を置き、ニューヨーク証券取引所に上場する食品小売企業です。2026年1月31日時点で、さまざまな地域別の店舗名のもと、35州とワシントンD.C.で2,697店のスーパーマーケットを運営し、うち2,250店に薬局、1,731店に給油所が併設されています。約51%の店舗は同社所有の施設で運営されています(Form 10-K、2025年度)。

同社の戦略は、世帯数を増やし、顧客のロイヤルティを高めることに焦点を当て、Fresh(生鮮)、Our Brands、Personalization(個別化)、eCommerceに投資するというものです。小売事業で生まれるデータと来店の流れが、データ分析サービスや第三者メディア収入などの代替利益事業を支え、そこで得た価値を小売に再投資すると説明しています(Form 10-K、2025年度)。

収益の仕組み

売上の大半は、店舗、給油所、オンラインでの商品販売です。その上に、データを使った別の収益の層が重なります。

  • 入り口:生鮮・日用品・薬局・給油などの日常の買い物による来店と購買。
  • データ:購買履歴にもとづく個別化の仕組みと、データ分析子会社84.51° LLCによる分析。
  • 課金:Kroger Precision Marketingが、消費財メーカーなどに、サイト内検索、ディスプレイ、ソーシャル、コネクテッドTV、店内の掲載を通じた広告を提供します(Form 10-K、2025年度)。
  • 継続:広告主は広告の成果を実際の購買と結びつけて確かめられるため、継続的な出稿につながる、と同社は考えています。
お金を払う人・対価買い物客:食品・日用品・給油消費財メーカー:広告の掲載料食品小売とリテールメディア広告
図1 Krogerの収益の流れ(Form 10-K(2025年度、2026年1月31日終了)にもとづく整理)。

数字で確かめる

  • 総売上:147,642百万ドルで、前年比0.4%増でした。内訳は、燃料を除く小売顧客向け売上が132,712百万ドル、スーパーの燃料売上が13,584百万ドルです(Form 10-K、2025年度)。売上の約9割は燃料を除く日常の買い物であることが読み取れます。
  • Our Brands:2025年度の売上は390億ドル超で、総売上147,642百万ドルに対して単純計算で約26%以上にあたります(Form 10-K、2025年度)。自社ブランドが売上の大きな柱であることが読み取れます。
  • eCommerce売上:2024年度比で16%増でした(Form 10-K、2025年度)。店舗網を土台にした注文受け取りと配送が、店舗の売上の伸びを上回って成長していることが読み取れます。
  • 店舗網:2,697店のうち、薬局併設が2,250店、給油所併設が1,731店です(Form 10-K、2025年度)。来店の理由を複数持つ店舗が、データを集める接点になっていることが読み取れます。

Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか

ここからはOtsumuの考察です。この事例の特徴は、食品スーパーの薄い利益を、データと広告という別の層で補う発想にあると読めます。同社は代替利益事業を「営業利益率が高い」と説明しています。毎週の買い物という頻度の高い行動から得られるデータは、広告主にとって「どの広告が実際の購買につながったか」を確かめる材料になります。

この循環が成り立つ条件は、データを生み出す小売事業の来店が減らないことです。10-Kでも、小売で生まれる価値を代替利益事業に回し、そこで得た価値を小売に再投資すると、順序を明確にしています。広告のために店舗の体験を損なうと、データの源泉そのものを痛めることになるため、広告収益は小売の価値提案を支える手段として位置づけられていると考えられます。

また、Our Brandsは価格と粗利の両面で独自性をつくる商品群であり、広告の対象となる他社ブランドとは別の役割を持ちます。広告収入を得る一方で自社ブランドも育てることで、他社メーカーとの交渉力と顧客への価値の両方を確保する設計だと読めます。

自社事業に持ち帰る問い

  • 自社の日常業務で自然に集まっているのに、活用されていないデータは何ですか。
  • そのデータや顧客との接点に、他社が対価を払う価値があるとすれば、誰にとってのどんな成果でしょうか。
  • データ事業を伸ばしても、顧客の体験を損なわないための線引きを、自社ではどこに置きますか。

小さく試すなら

  1. 顧客データのうち、個人が特定されない形で集計できる項目(購入カテゴリ、来店曜日、購入頻度など)を洗い出します。
  2. 取引先の中から、自社の顧客に届けたい商品やサービスを持つ2〜3社を選び、集計結果の要約を見せて関心を聞きます。
  3. 関心のある1社と、自社のメールまたは店頭掲示を使った小規模な告知を2〜4週間試し、反応を記録します。
  4. 反応した件数と顧客からの苦情の有無を確認し、続ける条件(掲載数、対象顧客)を文章にまとめます。

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資料の位置づけ

企業・サービス:The Kroger Co. / Kroger Precision Marketing・代替利益事業・Our Brands。参照資料:Form 10-K(2025年度、2026年1月31日終了)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。

参考資料と編集について

上記の公開資料(目論見書・年次報告書・企業の公式発表など)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。

執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.10.25

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