この事例の要点
- O'Reilly Automotive, Inc.は、米国・メキシコ・カナダで自動車アフターマーケット部品を扱う専門小売で、DIY(個人)とプロの整備業者の双方に販売する「dual market strategy」を掲げています(Form 10-K、2025年度)。
- 2025年の売上のうち約50%がDIY、約50%が整備業者向けです。整備業者向けは粗利率がDIYより低い一方、成長の機会が大きい領域と位置づけられています(Form 10-K、2025年度)。
- 売上は177.8億ドル(前年167.1億ドル)、営業利益は34.6億ドルで、32の配送センターと399のハブ店が在庫と配送を支えています(Form 10-K、2025年度)。
どんな事業か
O'Reilly Automotive, Inc.は米国(本社ミズーリ州スプリングフィールド)に本社を置く、米国の上場企業です。1957年に創業し、2025年12月31日時点で米国とプエルトリコに6,447店、メキシコに112店、カナダに26店を運営しています。扱う商品は、新品・再生のハードパーツ、メンテナンス用品、アクセサリー、塗装関連、工具、整備業者向けの設備などです(Form 10-K、2025年度)。
同社は個人と整備業者の両方を顧客にする点を事業の中心に置いています。全店が整備業者への供給に対応でき、一部の店員は毎週1日以上、既存・見込みの整備業者への営業に回ります。都市部に加えて人口の少ない地域にも出店し、小さな市場でも成り立つのは二本立ての構造があるためだと同社は説明しています(Form 10-K、2025年度)。
収益の仕組み
収益は店頭・オンライン・整備業者向けの部品販売です。顧客の層ごとに入り口と継続の形が異なります(Form 10-K、2025年度)。
- 入り口(DIY):店舗での来店、オンライン注文、店頭受け取り。技術に詳しい店員(Professional Parts People)の助言が選ばれる理由になる。
- 入り口(プロ):店員と地域の営業担当者による訪問営業、専用のモバイルアプリやEC。整備業者の近くに出店することが多い。
- 継続:整備業者の日々の部品調達として繰り返し発注される。ハブ店が周辺店へ配送し、同日中に広い品揃えを提供する。
品揃えは、有名ブランド品と自社ブランド(良い・より良い・最良の価格帯)の組み合わせです。配送センターは平均で15.6万以上のSKUを持ち、ハブ店は平均約6.3万SKU、一部地域では約11.5万SKUまで持ちます。通常の店舗は平均約2.4万SKUです(Form 10-K、2025年度)。
数字で確かめる
- 売上高:177.8億ドル(前年167.1億ドル)で、前年比は計算上約6.4%増です(Form 10-K、2025年度)。二本立ての構造で売上が積み上がっていることが読み取れます。
- 営業利益:34.6億ドル(前年32.5億ドル)で、売上に対する比率は計算上約19.5%です(Form 10-K、2025年度)。大きな店舗網と配送網を持ちながら、高い利益率を維持していることが読み取れます。
- 粗利益:91.7億ドルで売上の51.6%(前年51.2%)。整備業者向けの比率が上がると粗利率の下押し要因になる一方、仕入条件の改善と配送の効率化が上回ったと説明されています(Form 10-K、2025年度)。顧客構成の変化が粗利に表れることが読み取れます。
- 顧客構成:売上の約50%がDIY、約50%が整備業者向け(Form 10-K、2025年度)。個人向け中心の小売とは異なる構造であることが読み取れます。
- 物流網:配送センター32か所、ハブ店399店、人員は92,923人(2026年1月31日時点)で、うち配送センターの勤務者が11,649人です(Form 10-K、2025年度)。在庫と配送に人と設備を厚く投じていることが読み取れます。
Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか
ここからはOtsumuの考察です。この事業は、DIYの店舗と整備業者向けの卸売の機能を、同じ店舗・在庫・配送網で運営する設計と読めます。整備業者は「正しい部品が、すぐ届くか」で仕入れ先を選ぶと考えられ、一方でDIYの顧客は店員の助言と店舗の近さを重視します。両者の求めるものは違いますが、必要な土台は同じ「在庫の幅と速い補充」であり、一つの網で二つの需要を受けられます。
整備業者向けは粗利率が低くなる反面、毎日の発注という繰り返しが見込めます。DIYは粗利率は高いものの、天候や景気の影響を受けやすいとリスク要因にも書かれています。二つを並べることで、片方が弱いときにもう片方が支え、固定費の重い店舗網の稼働を保つ狙いがあると考えられます。そのために店員の技術的な知識に投資し、「社内昇進」の方針で育てている点も、この設計を支える要素と読めます。
自社事業に持ち帰る問い
- 自社の商品・拠点・在庫を、個人向けと法人向けのような別の顧客層に同時に使えていますか。
- 粗利率の高い顧客と、繰り返し発注してくれる顧客を、意図して組み合わせていますか。
- 現場の担当者が顧客に提供している「知識」や「助言」は、どの顧客層にも効いていますか。
小さく試すなら
- 直近1年の売上を、粗利率と発注頻度の二軸で顧客別に整理します。
- 発注頻度が高い法人顧客のうち、取引が小さい2〜3社を選び、担当者が週に一度、状況を聞く訪問または連絡を2〜4週間行います。
- 聞き取った欠品・納期・相談の内容を一覧にして、在庫か助言のどちらが原因かを分けます。
- 最も多かった原因に対して、在庫の置き方か担当者の知識共有のどちらか一つを変え、注文の頻度と金額を比べます。
関連するビジネスモデル
資料の位置づけ
企業・サービス:O'Reilly Automotive, Inc. / DIYとプロ向けの二本立て。参照資料:Form 10-K(2025年12月31日終了年度)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。
参考資料と編集について
上記の公開資料(目論見書・年次報告書・企業の公式発表など)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。
執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.10.25