この事例の要点
- Ross Stores, Inc.は、Ross Dress for Lessとdd's DISCOUNTSの2つのブランドでオフプライスの衣料・ホームファッション店を運営しています(Form 10-K、2025年度)。
- 商品の多くをメーカーから直接買い、一部は「packaway」として倉庫に保管してから店に出します。これで、有名ブランドの比率を高めながら安い価格を保つ設計です(Form 10-K、2025年度)。
- 2025年度の売上は22,751百万ドル、営業利益は2,707百万ドル(営業利益率11.9%)で、2026年にはRoss 85店とdd's DISCOUNTS 25店の出店を計画しています(Form 10-K、2025年度)。
どんな事業か
Ross Stores, Inc.は米国の小売企業で、NASDAQに上場しています。2026年1月31日時点で、Ross Dress for Lessは44州、ワシントンD.C.、グアム、プエルトリコに1,904店、dd's DISCOUNTSは22州に363店を持ちます。Rossは、百貨店や専門店の定価より20〜60%安い価格で、当季の有名ブランド・デザイナーブランドの衣料、靴、ホームファッションを売ると説明されています。主な客層は中所得の世帯です(Form 10-K、2025年度)。
dd's DISCOUNTSは、もう少し価格帯を抑えた品ぞろえで、中堅の百貨店やディスカウントストアの定価より20〜70%安く売る店です。客層は、より低めから中程度の所得の世帯とされています。2つのブランドとも、価値を重視する顧客に向けた店で、商品の選定、仕入れ、価格、立地を顧客像に合わせて決める、と同社は説明しています(Form 10-K、2025年度)。
収益の仕組み
収益源は店舗での商品販売で、仕組みは仕入れの時期をずらす点にあります。
- 入り口(買い付け):メーカーから直接買うことが多く、百貨店や専門店より買い付けの時期を遅くすることで、割安な条件で有名ブランドを手に入れる、と同社は説明しています。主な買い付け事務所はニューヨークとロサンゼルス、補助としてボストンにあります。
- 課金(在庫の持ち方):届いた商品は、そのまま店に出す場合と、倉庫に保管する「packaway」にする場合があります。packawayは、後日、時には翌年の同じ季節の初めに店へ出す前提で買った商品で、有名ブランドの割合を高めるのに有効な方法とされています。
- 継続(店の拡大):既存店の売上と新規出店の両方で売上を伸ばす計画を示しています(出店計画は後述)。
packawayの保管期間は、商品分類や季節によって違いますが、通常は6か月未満とされています。保管量は、市場に魅力的な買い付け機会がどれだけあるかで変わる、とも説明されています(Form 10-K、2025年度)。
数字で確かめる
- 売上:22,751百万ドル(2025年度)、前年度は21,129百万ドル。既存店売上は5%増(Form 10-K、2025年度)。店を増やしながら既存店でも売上が伸びていることが読み取れます。
- 営業利益:2,707百万ドル、前年度は2,586百万ドル。営業利益率は11.9%で、前年度の12.2%からは下がっています(Form 10-K、2025年度)。増収でも利益率は一定ではなく、費用の動きに左右されることが読み取れます。
- 純利益:2,145百万ドル、希薄化後1株当たり利益は6.61ドル(Form 10-K、2025年度)。大きな売上規模に対して、薄利多売の型でも利益が積み上がっていることが読み取れます。
- 買掛金レバレッジ(買掛金÷商品在庫):91%、前年度は87%(Form 10-K、2025年度)。仕入先への支払いの期間が在庫と釣り合い、在庫の資金負担が軽くなっていることが読み取れます。
- 2026年の出店計画:Ross 85店、dd's DISCOUNTS 25店(Form 10-K、2025年度)。dd's DISCOUNTSの成長を再び加速させる意図が明示されていることが読み取れます。
Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか
ここからはOtsumuの考察です。この事業は「ディスカウント小売」の型で、価格の安さを「買い付けの時期と在庫の置き場所」の設計で生み出していると読めます。メーカーの余剰や遅い時期の機会を買い、必要なら倉庫で半年ほど寝かせて、売るべき季節に出すことで、仕入れの好機と売る時期のずれを吸収しています。倉庫は単なる保管庫ではなく、安く買える機会を逃さないための緩衝材として働いていると考えられます。
もう一つの特徴は、2ブランドの併用です。同じ仕入れの仕組みを、価格帯と客層の異なる2つの売場に振り分けることで、同じ商品の流れから異なる顧客に届けています。ただし、利益率が前年度から下がったことが示すとおり、規模を広げるほど、人件費や物流費の圧力も受けます。安さの源泉は買い付けの巧みさにあり、そこに店舗運営の効率が乗って初めて利益になる、と読めます。
自社事業に持ち帰る問い
- 自社が仕入れや調達で逃している「安く買える時期や機会」はないでしょうか。
- 好機に買った在庫を「寝かせて、適した時期に出す」緩衝の置き場を、自社は持っているでしょうか。
- 同じ調達の流れを、客層や価格帯の違う2つの売り方に振り分けられないでしょうか。
小さく試すなら
- 過去1年の仕入れ・調達で、通常より安く買えた機会の件数と、その理由を洗い出します。
- 3か月以内に売れる見込みの商品を1〜2品目選び、少量だけ先に買って保管し、出す時期を決めます。
- 2〜4週間のうちに、保管した分と通常の仕入れ分の販売価格・粗利・売れる速さを比べます。
- 保管の費用と売れ残りの割合を記録し、続ける価値があるかを判断します。
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資料の位置づけ
企業・サービス:Ross Stores, Inc. / Ross Dress for Lessとdd's DISCOUNTS。参照資料:Form 10-K(2026年1月31日終了の事業年度)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。
参考資料と編集について
上記の公開資料(目論見書・年次報告書・企業の公式発表など)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。
執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.10.25