ナレッジマネジメントとは
ナレッジマネジメントとは、社員一人ひとりが業務の中で身に付けた知識、経験、ノウハウを組織の財産として集め、共有し、ほかの人が活用できるようにする取り組みです。平易に言えば「誰かが知っていることを、必要な人がすぐに使える状態にすること」です。
英語では Knowledge Management で、KMと略されることもあります。日本では、経営学者が提唱した知識創造の理論とともに広まり、個人の頭の中にある知識を組織の知識へと変えていく考え方として知られています。
仕組み・ポイント
ナレッジマネジメントでは、知識を大きく二種類に分けて考えます。
| 種類 | 意味 | 例 | 共有の方法 |
|---|---|---|---|
| 形式知 | 言葉や数字で表せる知識 | 手順書、FAQ、過去の提案書 | 文書化、データベース化、検索 |
| 暗黙知 | 言葉にしにくい経験やコツ | 顧客との交渉の勘所、トラブルの予兆の察知 | 同行、対話、事例の共有、振り返り |
暗黙知を対話や事例共有によって言葉にし(形式知化)、それを組み合わせて新しい知識を作り、実践を通じて再び個人の身に付ける、という循環を回していくことが基本の考え方です。
実際の仕組みとしては、次のような手段が組み合わされます。
- 社内Wikiやナレッジ共有ツールで、手順やノウハウを記事として蓄積する
- 社内向けのFAQで、よくある質問と回答をまとめる
- 過去の提案書や議事録を、検索できる形で保管する
- 事例共有会や振り返りの場で、経験を話してもらう
- 生成AIを使い、社内文書を検索・要約して質問に答える仕組みを作る
最後の手段は近年広がっている方法で、社内文書を検索してその内容をもとにAIが回答する、RAG(検索拡張生成)と呼ばれる仕組みを使います。ただし、元になる文書が古かったり整理されていなかったりすると、AIも誤った回答を返します。AIの活用は、文書を整える取り組みとセットで考える必要があります。
実務での使い方・具体例
ある会社のカスタマーサポートで、同じ質問に対して担当者ごとに回答が違い、ベテランに確認が集中していたとします。ナレッジマネジメントの観点から、次のように取り組めます。
- 過去の問い合わせを分類し、頻出する質問を洗い出す
- ベテランの回答をもとに、標準の回答と判断のポイントを記事にまとめる
- 問い合わせ管理ツールから、関連する記事をすぐに参照できるようにする
- 新しい質問や回答の修正があれば、対応した担当者が記事を更新するルールにする
- 月に一度、よく参照される記事と、回答に迷った事例を振り返る
この取り組みで、ベテランへの確認が減り、回答のばらつきも小さくなります。さらに、蓄積した記事をもとに顧客向けのFAQを整えれば、問い合わせそのものを減らすこともできます。
続く仕組みにする工夫
ナレッジの共有を続けるには、書く人の手間を最小限にし、書いたことが役に立ったと実感できる仕組みが欠かせません。テンプレートを用意して書き始めのハードルを下げる、記事が参照された回数を見えるようにする、業務の流れの中で自然に記録が残るようにする、といった工夫が有効です。共有が続く仕組みづくりは社内のナレッジ共有が進まない原因でも詳しく解説しています。
よくある誤解と注意点
「ツールを導入すればナレッジが集まる」というのは最も多い誤解です。ツールはあくまで器であり、書く理由と書く時間がなければ、記事は増えません。多くの場合、最初の数か月は投稿があっても、やがて更新が止まり、古い情報ばかりの場所になります。
また、情報を集めることに力を入れすぎて、探しやすさが後回しになるのもよくある失敗です。記事の分類ルールやタイトルの付け方を決め、古い記事を整理する担当を置くことで、「探しても見つからないから人に聞く」という状態を防げます。
さらに、共有してはいけない情報の扱いにも注意が必要です。顧客の個人情報や人事に関わる情報、契約上の秘密情報が、誰でも見られる場所に書き込まれてしまうことがあります。書いてよい情報とそうでない情報の基準、閲覧権限の分け方を最初に決めておきましょう。生成AIと組み合わせる場合は、AIが閲覧権限を超えた情報を回答に含めないように設計することも欠かせません。
関連用語
- 属人化:知識が個人に閉じた状態。ナレッジマネジメントで解消を目指す
- ナレッジベース:知識を蓄積・検索できるようにした情報の集まり
- FAQ:よくある質問と回答をまとめたもの
- SOP(標準作業手順書):形式知として手順をまとめた文書
- セルフサービスサポート:顧客が自分で解決できるように情報を整える考え方
Otsumuに相談できること
ナレッジマネジメントは、ツール選びよりも、何を誰がいつ書き、どう使われるかという運用の設計が成否を分けます。Otsumuの自社サービス運用の自動化コンサルティングでは、共有すべき知識の整理から運用ルールづくりまでを支援し、社内文書を活用する社内ツール開発やRAG(社内文書検索AI)の開発もご相談いただけます。
「ナレッジ共有ツールを入れたが使われていない」という段階からでも、30分の無料相談でお話を伺います。
執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.10.01